2003年10月31日(金) |
山口組組長に使用者責任を認める |
日経(H15.10.31付)社会面で、大阪高裁で、山口組組長に使用者責任を認めたと大きく報じていた。
裁判所は、「抗争は、暴力団の基本的事業もしくは密接に関連する行為である」という判断をしたそうである。
暴力団にとって、抗争が「事業またはそれに関連する行為」というのは何だか笑えるが、解釈としては可能かもしれない。
しかし、この事件のポイントは証拠の問題であったと思う。
裁判所は、「誤射行為を、実行犯の私的行為ではなく、抗争である」と認定したうえで、「山口組組長は、下部組織についても指揮監督することが可能な使用者の地位であった」としている。
しかし、「当該事件がその当事者だけのケンカなのかそれとも抗争なのか」、「山口組組長の指揮監督がどこまで及ぶか」などについての証拠としては、一般的には新聞報道ぐらいしかないと思う。
つまり、裁判所を説得するだけの証拠を集めることは困難が伴うと思われる。
ところが、この事件は警察官が誤って撃たれて死亡したものであり、その家族が山口組組長を訴えている。
したがって、警察の全面的協力があり、捜査資料が積極的に提出されたのではないかと推測されるのである。
そのような捜査資料があって初めて、前記の認定が可能だったのではないだろうか。
言い換えれば、山口組が絡んだ事件であれば常に山口組組長を訴えることができるようになったわけではないということである。
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