日経(H16.2.19付)1面で、企業が情報を不正に開示した結果、株取引で損失した場合、企業に対する賠償責任の訴えが容易になるように証券取引法を改正すると報じていた。
これまでは、情報を不正に開示していたとしても、投資家の損失との因果関係の有無や、損害額の算定が困難であった。
それを、改正により、情報不正開示と損害とに因果関係があると推定することにし、また、損害額については、前後2ヶ月の平均株価と、投資家の売却時の株価の差額とを損害とするとのことである。
社会が複雑になると、一つの原因だけで一つの結果が生じるわけではなく、因果関係は複雑になってくる。
また、損害の算定も難しい。
そのため、投資家が訴訟を起こすことは容易ではなかった。その意味で、このような法改正は望ましい。
ところで、記事では、前後2ヶ月間の平均株価が180円の場合、その投資家が120円で売却したとすると、法改正により、60円が損害とされると解説していた。
しかし、仮にその投資家が、株価を100円で購入していたとすると、120円で売却できたのだから損害がないともいえそうである。
このように損害の算定というのはなかなか難しい。そのため、法律案のように、ある程度は擬制によって算定するしかないのである。
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