2004年04月16日(金) |
イラク人質事件−政府は要した費用を家族たちに請求できるか |
日経(H16.4.16付)1面トップでイラクでの人質解放を伝えていた。
この事件で政府が要した費用について、本人たちに負担させろという意見がかなり出ているそうである。
雪山などでの捜索費用については、遭難者に請求されることが多いが、それは、例えばヘリコプターが飛ぶ前に、その費用を誰が負担するのか確認しているからである。
遭難者の家族が、自分たちで負担するといえば、そこで契約が成立するから、その契約に基づき費用請求することができる。
では、今回の場合はどうであろうか。
おそらく、現時点では家族に費用負担することの了解までは確認していないと思われるから、契約による請求はできないだろう。
では、人質になった人たちに不法行為責任に基づき損害賠償請求をすることは可能だろうか。
退避韓国が出ているイラクに敢えて入国したからといって、直ちに違法とはいえないだろう。
なぜなら、移転の自由は憲法22条で保障された権利だからである。
そうすると、不法行為に基づく損害賠償請求はできないことになる。
それ以外に請求する場合に根拠となるのは、緊急事務管理の規定だろうか。
民法は、人の身体等の危険を免れさせるために事務をした場合は、その事務のために要した費用を償還請求できるとしている(民法698条以下)。
政府はこの規定に基づき請求するのかも知れない。
その後の報道では、政府は、人質になった人たちに対し、飛行機代(エコノミー料金)と健康診断費用を請求するとのことである。
それぐらいは仕方ないかなと思うし、家族も支払うと思うけど、政府はいかなる根拠で請求しているのかについては興味がある。
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