今日の日経を題材に法律問題をコメント

2004年04月22日(木) 交通事故で身代わりになって出頭すると犯罪になる

 日経(H16.4.22付)社会面に、交通事故で、身代わりになって、運転していたと嘘の申告をした女性と、実際に運転していた人が逮捕されたと報じていた。

 交通事故で身代わりになって出頭するケースは比較的よくあるようで、ときどき記事になっている。


 記事では、身代わりを頼んだ人は犯人隠避罪の教唆で逮捕されたと書いていたが、実はこの点は刑法理論と絡んで議論がある。


 身代わりを頼んだ人は犯人なのだから、自分を隠すということは概念としてあり得ず、犯人隠避罪の正犯は成立しない(この点は争いがない)。

 とすると、それより軽い犯人隠避罪の教唆犯も成立しないのではないかという疑問があるからである。


 そして、教唆犯の成立を否定する学説も有力であるが、判例、通説は教唆犯の成立を認めている。


 したがって、身代わりで出頭した人は犯人隠避罪となるし、身代わりを頼んだ人は犯人隠避罪の教唆が成立することになる。



 私が学生時代のことであるが、友人(A)が下宿で酒を飲んでいたのだが、ビールが足りなくなり、車で買い出しに行った帰りに、近所の塀にぶつかったことがあった。

 その友人(A)は飲酒運転なので、車をそのままにして、飲酒運転の証拠となるビールを抱えて下宿に戻り、同じ下宿の友人(B)に身代わりを頼んだ。
 
 しかし、身代わりになって「自分が運転していました」と申告したその友人(B)は、警察から事情を聞かれても事故時の詳しい話しをできるはずがなく、すぐにうそがばれて、警察にえらいお説教をされた(逮捕まではされなかった)。


 ということで、身代わりで出頭しても、事情を聞かれればうそはすぐに分かるし、頼んだ方も頼まれた方も犯罪になるので、やめた方がいい。


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