今日の日経を題材に法律問題をコメント

2015年02月06日(金) 余罪を処罰する趣旨で量刑を判断したとして一審裁判員裁判を破棄

 日経(H27.2.6)ネットニュース面で、三鷹市で高校3年の女子生徒が刺殺されたストーカー事件で、東京高裁は「一審は起訴されていないリベンジポルノ(復讐目的の画像投稿)を処罰する趣旨で量刑を判断した疑いがある」として、一審裁判員裁判判決を破棄し、審理を差し戻したと報じていた。


 起訴されていない犯罪事実(余罪)を、実質上処罰する趣旨で量刑として考慮することは許されない。


 他方、刑事裁判における量刑は、被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等すべての事情を考慮して決定するから、量刑のための一情状として、起訴されていない事実を考慮することは禁じられていない。


 これが最高裁が定めた基準であり、その後のすべての刑事裁判はこれに基づいて行われているし、刑事裁判官は当然この基準を意識している。


 そうであるのに「起訴されていない犯罪事実を処罰する趣旨で量刑を判断した」と認定されたのは、裁判員裁判では判決文を書くのに数日しかないため、慎重に検討する時間的余裕がなかったのかもしれない。


 あるいは裁判員の「市民感覚」に引きずられたのかもしれない。


 もちろん、非難されるべきは、一審の裁判員ではなく、刑事裁判官である。


 ただ、刑事裁判官だけの裁判では考えられないことであり、裁判員裁判の弊害が出た裁判であろうと思われる。


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