嗚呼、そうか。私にとっては、「遊び」と雖も所詮 義務 でしかなかったというわけか。そりゃあ、毎度毎度疲れるわけだ。
兄さんが居なくて、私は束の間の自由を手に入れる筈だったのに、手に入れた筈だったのに。何だ、却って状況は悪化しているみたいで、否、確然と状況は悪化していて、アオい空が鬱陶しく思われるくらいには、理由も無く涙が流れるくらいには、苛立ちで切らずにはいられなくなるくらいには、酷いのだ。兄さんはといえば、五月二日には退院してくるらしくて。逃げたいとは思えども、逃避するだけの時間的猶予も金銭的余裕も無い。
厭な夢を見たんだ。 私がリスカしているのを、母親に見つかった夢。兄に告げ口されたんだ。なんで兄に、そして母に、バレたんだろう。夢の中の私はとっても不思議がっていて、其れでいてちっとも意に介していないようだった。眼が覚めて、私は愕然としたけれども。――所詮夢じゃないか。そのようにも思った。だって、見つかるわけがない、あの人たちに。私のことなんか見ていなかった、今猶見ていない、そんな人たちに。
傷には全て理由があって、私の傷だって当然理由を潜めていて、私は其の理由を知って、理解して、受け入れているのに、受け入れているからこそ、私は左腕の傷を、一生携えていくのだろう。切るか切らないかは、私にとっては然程重要ではない。問題は、其処に傷があるかどうかだけであって。
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