進入。侵略。土足で上がり込んで来る人格達。――侵される。
此処のところ、ずっと、夢の中で領域を侵されている。私の、部屋。 最初は、私が部屋に入ると 人 が居て、家具の配置が微妙に――数十センチ単位でずれていて、私は 人 を追い出した後其れに気付き、必死で家具を元の位置に戻そうとするのだけれども、自分一人の力では到底動くものではなく、其の 人 は如何遣って動かしたのだろう――と思案しながら悔しい思いをしている。 次は、私はベッドで眠っている。部屋着だ、午後の、束の間の転寝。 人 が、部屋のドアを開ける。そうしてベッドを覗き込むようにして、足元に何か――お菓子のようなものを、幾つか放り投げて去って行く 人 。私は、其れを拾い集めて枕元に置く。薄笑いが聞こえる。 次も矢張り、私はベッドで眠っている。寝間着で、時間は朝方だ。不意に――大きな声が私の名を呼ぶ、否、叱るように叫ぶ。私は驚いて目を覚ます。其の声の 主 は、何度も私の名前を叫ぶ。私は恐怖で、起き上がることが出来ない。 今日、私はベッドで眠っている。頭痛で起きていられないのだ、部屋着で、昼下がり――夕暮れ前。 人 が、突然部屋に入り込んでくる。ベッドを覗き込み、就職は如何しただの卒論は如何しただのと生々しいことを訊いて来る。訊問だ。熱に浮かされている私は、普段は使わないような言葉遣いで 人 を追い払おうとする。そうすると其の 人 は私の額に手を当て、熱なんか無いじゃないかと嗤う。後ろからは別の 人 。二人で冷笑を残して、部屋を出て行く。私は、涙を流している。
全部、夢だ、そう思う。にも拘らず、何て生々しい。出て来る 人 は、全て私の身近な 人 だ――血統的に身近過ぎる、人。私の、何処かに潜む罪悪感の塊を露にされたような、不快な侵略。夢と現実の、狭間。境界線は何時しか曖昧になり――私は、自我を壊すのだろうか。 夢は、何時もモノクロだ。今回だって、例に洩れずモノクローム。でも――人間は暗闇の中では桿細胞しか働かないのだから、色彩を感じなくて当然なのだ。詰まり、私の見ている夢は――カラーではないということは――単純に脳の作り出した幻覚ではなく――視覚野が現実状況を強く反映しているということにならないか。だって、私が見た夢の中の時刻は、現実の時刻とほぼ一致している。そうして、私のベッドの頭部は、窓からの光が遮られる薄暗い所に位置しているのだ。……ほら、夢と現実なんて、こんなにも、曖昧な境界線でしか区切られていない。私は、もう、何が夢で何が夢ではないのか、判じることが出来ない。
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