朝のまだ透き通った空気の中を、 駅に向かって走る。 高い塀の向こうの老木に光る青々とした葉や、 黄色い帽子をかぶった通学途中の小学生のざわめき、 川面に映る葉桜。
近頃、 生きている時間が短い。
少しはやめの時間の普通電車に乗って、 黙々と本を読む。 一時間程で乗り換えの駅に着く。 エスカレータは使わない。 たくさんの階段ですいすいと人々を抜いてゆく。
ホームの端に立つ。 本の続きを読む。 地下鉄がごうごうと風を掻き乱して、 私の前に滑り込んでくる。 ねじ込まれるように乗り込む。
そして吐き出される。 降り注ぐ蛍光灯の白い光。 階段を昇る定期券を通す改札を抜ける。 長い階段がまっすぐ上に伸びている。 足が重くなる。 会社が近いから。
更衣室で着替える。 似合わない黄緑色の事務服。
エレベーターが口を空けている。 目の前が真空になる。
往きと帰りと、 週末だけは真っ直ぐいろんなことが見られる。
時間を無駄に消耗している。 自分に嘘をついて耐えるふりをして、 実はラクをしてる、怠けてる。
ずっとこんな生活を続ける事はできない。 私にはできない。
よかった、気付けて。
悩んでも、戸惑っても、 きっと歩き出す。
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