目が覚める。 私はやさしい匂いの背中にうもれている。 あやうく溺れてしまいそうになるけれど、 つまさきぎりぎりのところでとどまって そっとやわらかな輪郭をなでる。 その背中はこちらを振り向き、 目覚めのちゅうをしてちいさなしっぽを振る。 のびをして、眠気に負けてぱたりと倒れ、 ちゅうをねだってまどろんで、 それでも私が起き上がるとうれしそうについてくる。 いつもたのしいことをキャッチする大きな耳が朝はやわくたれている。
それにしても、へんなクセ。 明け方になると私の首におなかをのせて、彼は眠る。 もう少し大きい犬だったら、きっと息苦しいだろう。 まだ少しシャンプーの香りが残る、短い毛が頬にここちよい。 明け方私が寝返りをうつと、 目をつむったまま鼻先にはなをすりつけてくる。
いちにちに何度も、私をやさしいきもちにさせてくれる。 とくべつなそんざい。
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