
|
 |
2005年07月06日(水) ■ |
 |
Vol.588 日本でいちばん高い場所 |
 |
おはようございます。りょうちんです。
21歳の夏、俺は富士山に登った。その2年前、富士五湖ひとつである河口湖でキャンプをした俺らは、湖越しにそびえる富士山を見上げ、「今度は日本一高い場所をめざしたいね〜」なんて誰かが何気に言ったコトバを実現させることにしたのだ。 山頂をめざす友人の中に、登山経験者は誰ひとりいなかった。頼りにしたのは直前に買ったガイドブックだけ。そしてそこに載っていた「ハイキング気分で富士登山を楽しもう!」なんてコトバを鵜呑みにしたのが、大間違いだった。はしゃぎながら早朝に山中湖に着いた俺らは、最初にボートに乗る。誰がいちばん早く漕げるか競争してへとへとになったあと、次はサイクリング。アップダウンの続く道を、夏のひざしを浴びながら湖畔を一周。メインは富士登山なのに、この段階ですでに疲れ切ったカラダのまま、ようやく昼過ぎに俺らは5合目から登りはじめた。 登山開始数分後、予想以上の急勾配に驚く俺ら。最初は「結構キツいよね〜」なんてコトバも、登るに連れて無口になっていく。いつしか俺らは話をする余裕さえ忘れ、黙々と急傾斜を進んでいった。「俺らは若いからこんなのいらないよ〜」なんて言いつつも、登山道入り口でみんなで記念に買った杖。この杖が身を支え、どれだけ助かったことか。睡眠不足と山中湖での無茶が追い討ちをかけて、この登山がどんなに厳しかった部活の特訓よりもキツく感じた。薄くなっていく空気の中でぼんやりと思うのは、ガイドブックに書いてあった「ハイキング気分」だなんてあきらかにうそっぱちだということだった。 予定よりも大幅に遅れ、すっかり日も暮れてから俺らは8合5勺の山小屋に着く。疲れたカラダはすぐに泥のように眠りに落ちた。翌朝、雲間からの御来光はすばらしくきれいだった。そしてそこからさらに数時間かけてたどり着いた頂上。達成感はこの上ないもので、想像以上の感動と満足を俺らは噛み締めたのだった。 あれから12年。そして俺はこの夏、再び富士登山を企んでいる。日本でいちばん高い場所に、俺はあの日と同じように立つことができるのだろうか。
|
|