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りょうちんのひとりごと
りょうちん
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2005年07月26日(火)
Vol.593 伝説のライブ

おはようございます。りょうちんです。

1989年7月26日、俺は西武球場にいた。目的は、あるアーティストの野外ライブ。ポジティブな歌詞を説得力ある表現で歌い上げる彼女に魅力を感じて、俺はずっとこの人のライブに行きたいと思っていた。高校生の俺には高かったチケット代も奮発して、何度も電車を乗り継いで、そしてついにこの日念願の西武球場に向かったのだった。彼女はどんな歌声を聴かせてくれるのか。俺の好きな曲は歌ってくれるのか。ライブがはじまるまでの間、俺らはそんなドキドキを隠し切れないでいた。
ライブがはじまると、俺の想像以上に力強い彼女の歌声がスタジアムを包み、まばゆい照明と歓声が彼女を包んだ。一緒に歌い、一緒に叫び、こぶしを突き上げ、ジャンプをして。外野席から見る彼女は豆粒のように小さかったけど、パワフルに歌い上げる彼女の存在感はとても大きなものだった。
夕闇に包まれたスタジアムに、いつしか雨が降り出していた。しかしライブは雨なんて吹き飛ばすかのように続く。やがて本降りになった雨はさらに雨足を強めていった。ハイテンションになった俺らには、むしろ雨は刺激的だった。雨が強くなればなるほどボルテージは上がり、ライブも弾けていった。突然の稲光、そして雷鳴。もはや嵐になった。どしゃぶりの雨の中で、俺らは気が狂ったように彼女の歌声にすべてを預けた。しかし、激しい嵐には勝てなかった。これ以上の続行は危険だと主催者が決定した、ライブ中止の判断。彼女は泣いていた。自分のライブがこんなカタチで終わってしまう悔しさに、涙を流していた。最後にアカペラで歌った彼女の歌声は、雨の音にかき消されることなくスタジアム中に響き渡った。そしてこの日のライブは、今でも語り継がれる伝説のライブになった。
彼女の名前は、渡辺美里さん。今では西武球場も名前が変わりドームもついたが、20年も続いた彼女の野外ライブは今年が最後なんだそうだ。最近、車の中で彼女のCDをよく聴いている。なんだか懐かしくて、「パイナップル・ロマンス」が流れるたびに、びしょぬれになって叫び続けたあの日の記憶がよみがえってくる。