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2005年09月01日(木) ■ |
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Vol.604 竹林へ逃げろ |
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おはようございます。りょうちんです。
実家の向かいのAちゃんの家は、裏手に広い竹林がある。小学生だった時、「地震が来たらここに逃げれば大丈夫だね!」と言った俺のコトバの意味を、Aちゃんは理解していたのだろうか。 関東大震災が起こったのは1923年。もちろん俺は生まれてないが、俺の祖母はこの大地震に遭遇した。残暑が厳しかったその日、祖母は台所で昼食に食べる予定の天ぷらを揚げていた。そこへ前兆もなく突然襲った激しい揺れ。グラッと来た瞬間、祖母はいちもくさんに勝手口から外へ出て、すぐ裏の竹林に逃げ込んだ。いちばん手前の太い竹の幹につかまりながら揺れが収まるのを待つ間に、祖母は勝手口から見える火にかけたままの天ぷら油が激しい揺れのせいでばしゃばしゃこぼれているのを見ていたんだそうだ。「暑い日だったしね、天ぷらの火のそばにいたからなおさら暑くて、だから勝手口を開けっ放しにしておいたのが良かったんだよ。あのまま火のそばにいたら天ぷらの熱い油がカラダに飛び散って、大ヤケドするところだったよ。」と、今は亡き祖母はちょっと大きな地震が来るたびにその話をした。 そして、「地震が来たら竹林に逃げるんだよ。竹の根っこは見えないけれど、地面の中ではあっちこっちに網の目のようにびっしりと生え渡っているから、地震が来てどんなに激しく揺れても大丈夫なんだよ。わたしがあの時ケガひとつせずに済んだのも、竹林に逃げ込んだおかげなんだから!」と、祖母の体験した関東大震災の話は毎回こうして締めくくられるのだった。年老いた祖母の話がどこまで本当で信憑性があるものなのかはわからないが、子どもの頃から地震が来たら竹林へ逃げろというのが俺の中では常識だったし、だから家の裏が竹林だったAちゃんがちょっとだけうらやましかったりもしたのだった。 今年の夏が本番を迎えた頃、震度5弱を記録する地震があった。電信柱がメトロノームみたいに揺れているのを見て、ついに大地震がやってきたとその時俺は思ったのだが。考えてみたら、この家の近くには竹林がないことに気がついた。
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