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りょうちんのひとりごと
りょうちん
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2008年04月18日(金)
Vol.717 ひと肌脱ごう

おはようございます。りょうちんです。

俺は父のあとを継いで床屋になるという道を選ばなかった。でももしも資格と技術を持っていたならば、今すぐにでも転職して理容師として父と同じ仕事をして生きていきたい。去年、我が家の店の歴史を調べていくにつれて、俺はそんな思いがどんどん強くなっていった。俺が床屋ならこんなアイデアを取り入れたいとかこんなやり方で店を繁盛させたいとかさまざまな夢が膨らむ一方で、だがそんな簡単な話でないことは百も承知だった。まったくの素人が理容師の資格と一人前の技術を手にするだけでも少なくとも数年間という時間が必要で、「まだ遅くはないよ!」なんて助言してくれる人もいたが、今の俺にはすでに厳しい選択肢に違いなかった。
この春、離れて暮らしていたすぐ下の弟が戻ってきて、実家を拠点に新しいビジネスを始めることになった。そう言うと聞こえは良いが、簡単に言えば理容師として新たな事業をスタートしたのだ。元来弟は、父の背中を追って実家の跡取りとなる予定だった。理容師の資格もとっくの昔に持っているし、専門学校卒業後は修行の身として何年も他の店で働いていた。しかし、過疎が進み高齢者ばかり集まる田舎の実家に戻ってきてしまうと、自分の腕も上達しなければ将来的に商売として見通しが明るいとは思えない。そんな理由から弟は理容師の道は選んだが、実家であとを継ぐことは頑なに拒んでいたのだ。残念だが、弟の言い分はわかる。俺が弟でも同じ考え方だろう。だからこそ弟の代わりに長男である俺が父のあとを継いで、実家で床屋をやっていかなきゃという使命感を感じていたのだ。
ところがひょんなことに、その弟が戻ってきて実家で床屋を営むことになった。話を聞くと、俺が漠然と考えていたさまざまなアイデアを100倍も緻密に練りこんだプランをすでに持っていて、徐々に実行もしている。自分なりのやり方で新しいビジネスとしてこの仕事をしていきたいと、熱く信念を語った。これは本気だ。想像だけで夢を描いていた俺と違い、弟は生きていく手段としてこの道を選んだのだ。
気がつけば、なんだか怖いくらい上手く話が進んでいる。これからいくつも壁が待ち受けているに違いないが、弟の一念発起に俺もひと肌脱ごうとココロに決めた。