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2008年09月08日(月) ■ |
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Vol.728 余計な詮索 |
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おはようございます。りょうちんです。
我が家のすぐ下の階の部屋には、若いご夫婦とちびっこ兄弟が住んでいる。時々アパートの前の道路で奥さんがちびっこたちを遊ばせてたり、大きなバイクを触っているダンナさんを見かけたり。話はしないが同じ建物に住む住人同士、会えば軽く会釈くらいする。去年の夏にベランダの窓を開けていると、すぐ下からちびっこの騒がしい声がよく聞こえてきた。別にそれが不快なのではなく、むしろそのくらいの子どもがいてもおかしくない俺にとってはなんだか少し微笑ましく思えた。 ちびっこと奥さんの姿が最近見えないなぁと、不信に思い始めたのは今年の春。冬の間は窓を締め切っていたためちびっこのにぎやかな声は聞こえなくて当たり前だったが、夏が近づいてきてもひっそりしたまま。そういえば家の前で遊ぶ姿も近頃見かけないし、玄関の脇には子ども用のバギーや虫かごもほこりをかぶったまま置きっぱなしになっている。晴れた日にはベランダいっぱいに干してあった洗濯物も、もうずいぶん長いこと見かけていない。でも夜になるとカーテンの隙間から灯りは漏れているので、誰かは住んでいるようだ。 あぁそうか。きっと何らかの事情で、奥さんは子どもふたりを連れて実家に帰ってしまったんだろう。残されたダンナさんは、今はひとりでさみしく住んでいるのかもな。ちびっこが遊んでいたおもちゃもそのまま置き去りだし、洗濯物も少なくなりベランダも殺風景になった。若いご夫婦だから何かと苦労があったに違いない。 お盆が過ぎたある日、窓の外から何やら聞き慣れない音が聞こえてきた。耳を澄ませると、それは赤ちゃんの声。急いでベランダに出て階下を見下ろすと、所狭しと干された洗濯物の奥から聞こえるのは小さな赤ちゃんの泣き声だった。そうか、そうだったのか。奥さんとちびっこがいなくなった理由はダンナさんに愛想を尽かせて出ていったのではなく、3人目の赤ちゃんを出産するためだったのか。俺らが勝手に推測した余計な詮索は、大きなお世話だったようだ。今では赤ちゃんの声が聞こえるたびに、去年よりももっと微笑ましく思える毎日を俺らは過ごしている。
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