猫の足跡
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2002年03月15日(金) 金曜フリー走行

 ちょっと早めに起きて、ボーイさんに持ってきてもらった英語版新聞のF1記事を読みながら、のんびり朝食をすませ、ちょっぴり一人旅気分を味わった後、団体バスでセパン(地名)・サーキットへ。

 セパンまでは車で約1時間。なんと空港のすぐ脇でした。近々モノレールが市内から空港まで開通するらしいので、それができたら、ツアーじゃなくっても便利になるようです。

    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇ 

 サーキットの駐車場でツアーからは解放。とはいっても観戦席は皆一緒だし、グランドスタンド表彰台前という、ドライバーを見たい向きにはいいけれど、レース好きには悲しい席です(もちろん、値段が一番高いイイ席なんですが、フォーミュラカーは直線では時速300キロを越えるので、右から左へ「キーン」と甲高い音を立てて一瞬で消えてしまい何ら面白みがないのです)。う〜む、うれしくないなあ。

 この事態を打開すべく、とりあえずサーキットのチケットセンターへ直行しました。チケットの変更ができないか聞いてみましたが、やっぱり駄目。正規の個人チケットなんだからいいじゃないかと思うんですけどねぇ…。

 仕方がないので、ブースのお姉さんからマジックペンを拝借し、用意したホテルの便箋にでっかい字で書きなぐります。

 ◆◆◆私の表彰台前のチケットと、あなたのK1(1コーナー)席のチケットを交換してください◆◆◆

 紙を手にもってチケットブースの前で張ること約10分。結構、興味を持ってくれる人は多いのですが、悲しいかなチケットが1枚しかないことがネックで、なかなか商談成立に至りません。

 そこに現れたのは「F1フーリガン」と名高きフィンランド人5〜6名…。

 以前、鈴鹿でフェラーリ帽をかぶっていたら、酔っ払ったフィンランド人に「なぜお前は日本人の癖にイタリアを応援するんだ」とでっかい手で頭をぐりぐりされた過去があるので、一瞬緊張。今回は一切その手の「赤いニオイ」はしないはず!と、自分の格好を上から下まで頭の中で再現しつつ身構えていると、ありがたくも、バイキングと見まごう巨体のおっさんが取り替えてくださるとのこと。「表彰台でキミ・ライコネンを見たいんだ!!」そうで。

 こちらも喜んで交換したはいいけれど、はたと考えると私は残りの「フィンランド人集団」とともに観戦することになるわけで…。うわ〜〜どうしよう。

 しばし固まった後、「仕方ない。シューさんばっかり強いシーズンは全く持ってつまらないから、今回は“キミ・ライコネン/ミカ・サロ私設応援団”の一員になってマクラーレンとトヨタを応援しましょう。ついでに、琢磨とハイドフェルトとフレンツェンも応援しよ〜〜っと」と心に決め、気を取り直しておっさんたちと少し話をしました。

  「どこから来たんだ」「日本」
  「トヨタのサロはフィンランド人で奥さんは日本人だぞ、知ってるか?日本とフィンランドは友達だ」
  「知ってる。どっちかっていえばキミ・ライコネンのほうが好きだけど。
   更に言えば、ミカ・ハッキネンのほうがもっと好きだったな〜」
  「そうかそうか、俺たちもハッキネンの応援をしてたんだ」

 とおっさんてば、やおら「ハッキネン応援節」を歌いだしちゃった!!調子に乗ってほかのおっさんが、同じ節回しで「ライコネン応援節」…。うわぁあああ。こ、これは鈴鹿でからんできたオヤジが歌ってたやつじゃないですか!!!
  
 恐る恐る、「鈴鹿にはきたことあるの?」と聞いてみると、「日本は物価が高いから行ってない」…ってことは、あのフィンランド人もこのフィンランド人も、みんなこんな応援をするってことですか……!?これは悪夢だ。
 
 まあ、知ったかの日本人F1オタクに囲まれて窮屈な思いするよりはいいか。と再度気を取り直し、おっさんたちと別れてサーキット内を探検に出かけました。

    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇ 

 サーキットはとても広くてきれいです。展示車なども多くてちょっとくらいなら触っても怒られないし、金曜は人も少なくて快適そのもの。物価は…やはり高くて鈴鹿の8掛けくらい(Tシャツが2500円くらい、パンフは1400円くらい)。チケットもそんな感じですね。日本人にとっても結構高いのに、現地の人は見に来ることができるのかしらと心配になりました。

 さてさて、フリー走行前。

 1コーナーのスタンドはまだまだガラガラなので、色々移動して、見やすいポイントを探します。ストレートの半分くらいと1,2コーナー、3コーナーからの直線が見えて、思ったとおりK1スタンドは最高に面白い観戦ポイントになりそうです。屋根もついてて快適だし、コースからの距離も近くて、写真とる人にもよさそう。場内放送はなんだかよく入らなくて、トラクションコントロールみたいにブツブツ・バリバリ音がして最悪ですが、どうせ内容はろくにわからないのだから問題はありません。

    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 いよいよ、フリー走行開始。

 お約束どおり、ご当地のユーンから登場。琢磨もすぐに続いて、私的には大拍手です。でも、ユーンが遅いのはともかく、琢磨の車、あんまり良くないです。1,2コーナーが複雑な変則コーナーなのだけれど、その2つ目の出口で必ず挙動が乱れます。フィジコと比べてやっぱりまだちょっと劣る感じも受けますね。残念ながら…もちろん、まだ路面は出来上がってないし、琢磨自身セパンに慣れていないという理由が大きいと思われるので今後を期待しましょう。

 トヨタも同様…というより、正直、コーナリング最悪です。そのかわりストレートが馬鹿みたいに早いですが…。凄い車を作ったものだ。トヨタさんってば。

 シューさんはじめトップクラスの車はやっぱりそのへんキレイに回っていきます。特にシューさんのライン取りの美しさは朝から絶品。鈴鹿のS字でも感動するくらいきれいですが、本当に、シューさんのためだけに、金色のインクをつけた鵞ペンでレコードラインが1本引いてあるんではないかと思うくらい。バリチェロもそつなくまとめてます。
 ラルフは、2コーナーの出口で挙動を乱すことがありました。モントヤも1,2回ミスしましたね。ってことはウィリアムズの車の特性なのかな? キミは結構キレイだけど、あんまり迫力を感じません。DCはインストレーションチェックしただけで、ずっとガレージに引っ込んだままです。大丈夫かしら?マクラーレン。

 いやー、やっぱ生のレースはいいです。生で見るに限ります。うっとおしい実況はないし、タイヤの匂い、耳を撃つエンジン音、熱い空気を切り裂いて風のように通り抜けるマシン…。マレーシアまで来た甲斐がありました。

 と、深呼吸して少し冷静になったところで、あたりを見渡すと、やっぱり日本人ってヘンって思われるのが理解できます。

 金曜午前のフリー走行なんてまだまだ全然人が入っていないのに、妙にきっちり席が埋まっていると、そこは日本人団体様のお席。今のうちくらい色々探検して自由に好きなところから見たらいいのに…。このクソ暑いのに、品良くちんまりと固まっています。どうしてなんでしょう。

 しばらく見て、グランドスタンドにもちょっとお邪魔しようと思い立ちます。ゲートのチケットチェックに人のいない時を見計らって、警備のお兄さんに頼み込み大作戦。「ね、5分だけ、お願いっ。もうフリー走行おしまいでしょ。ちょっとだけ見たいの…、一生のお願い(はあと)」。もう、日頃使わない女の武器を最大限に使っちゃいましたよ、わはは。で、めでたく「5分だけだよ」とOKをもらい、中に入れてもらいます。スタートもピットも表彰台もみーんな目の前。一回くらいはこういうのも良かったかも…とちょっぴり後悔しかかりますが、やはり車は右から左へ轟音立てて通り過ぎるだけでした。

 結果としてフリー走行#1はシューさん、バリチェロ圧倒。早くも戦況確定か??つまんないぞ、とがっかり。でもそれ以外は、意外なメンツが上位に名を連ねています。琢磨も頑張って6位。まあ、まだまだ先は長いのですけれどね。

1 M・シューマッハ   フェラーリ        1’38.626    
2 R・バリチェロ    フェラーリ        1’39.602 0.976
3 N・ハイドフェルト  ザウバー・ペトロナス   1’41.124 2.498
4 E・ベルノルディ   アロウズ・コスワース
5 J・バトン      ルノー          
6 佐藤琢磨       ジョーダン・ホンダ    
7 H−H・フレンツェン アロウズ・コスワース   
8 J・トゥルーリ    ルノー          
9 G・フィジケラ    ジョーダン・ホンダ    
10 J−P・モントーヤ  ウィリアムズ・BMW   

    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇ 

 昼休み:マレーシア空軍のホーネット(F/A-18戦闘攻撃機:私の視認では…)のデモフライトがありました。本当に国家的威信をかけた行事なんだなあと感動。F1レースカーの音には慣れてるはずの観客がビックリして耳をふさいでるのが可笑しいです。私は…戦闘機の爆音なんて日本で十分鍛えられちゃいましたから全然平気ですわ。フンッ、アメリカの馬鹿。
 サーキットのランチは腹立ちモノです。米軍ハンバーガーのような味も素っ気もない代物とコールスロー、ポテトチップ数枚入りランチボックス(ソフトドリンク付き)でなんと20RM(約700円)。缶ビールは1本13RM(440円)。ぼりやがってこの野郎って感じです。

    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 さて、午後のフリー走行。

 K1席の隣にある自由席?K2に入って観戦。こちらは草っ原です。2コーナーの立ち上がり、3コーナーとその先のストレートを本当に良く見ることができます。誰もいないくって気持ちがいいったら。もうっ。
 でも、警備の人が寄ってきて「どうしてK1のちゃんとした席があるのにこっちで見るのか」「どこから来たのか、たった一人で見に来たのか?学生か?」などいろいろ聞いてきます。「誰もいなくって気持ちいいし、レースも良く見えるポイントだから」って言っても釈然としないらしく、ついには「物好き」の烙印を押されてしまいました。

 午後は、キミがトップタイム。暑さは更に増し、タイヤの皮むきも始まって、ミシュランタイヤ組がタイムを上げ始めました。路面にだんだんラバーがついていくのが手に取るように分かります。
 ただね…。マクラーレンは、去年から「金曜番長」だったからなんとも…。ルノーはなかなか良い感じできれいに走ることができています。サロはトヨタの直線の伸びを生かしてなんと5番手!3コーナーからの上りストレートを走り抜けるマシンは爽快さすら漂わせています。

 フェラーリはタイムよりも、なんだか別のセットアップを始めた模様。
 
1 K・ライコネン    マクラーレン・メルセデス  1’37.399    
2 D・クルサード    マクラーレン・メルセデス  1’38.038 0.639
3 M・シューマッハ   フェラーリ         1’38.490 1.091
4 R・シューマッハ   ウィリアムズ・BMW   
5 M・サロ       トヨタ          
6 J−P・モントーヤ  ウィリアムズ・BMW   
7 R・バリチェロ    フェラーリ        
8 J・バトン      ルノー          
9 J・トゥルーリ    ルノー          
10 N・ハイドフェルト  ザウバー・ペトロナス   
 
    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 フリー走行終了後、バスでKL市内に戻ります。悪夢の市内観光つき。一人途中で降ろしてもらおうかとも思ったのですが、どんなものか興味もあったので一応参加してみました。王宮と戦争記念碑をちょっと案内した後は想像どおり、「バティックの店」「貴金属店」だそうで…。旅行会社のマージンの関係もあるから、店に入るだけ入って、速攻抜け出し、集合時間まで近所を散策することにしました。
 やがて見つけた屋台風食堂で、雲呑麺と漢字が書いてあるのを指差して「ワンタンミー」と言ったら通じたので、それを試してみました。結果、出てきたのは「ワンタンスープ」+「チャーシュー焼きそば」…。いやー美味しかったです。また今でも食べたいくらい。お値段は3RM(約100円)で大満足。サーキットがえりでおなかすいてたのでパクパク食べちゃいました。
 外国人はめずらしいらしく、お店のお姉さんが、本当に片言の英語で話し掛けてきます。「どこから?」「日本」「うちのご飯おいしい?」「うん。とっても」くらいでしたけど。

 ホテルへの帰り道、例の一人参加のコが寄ってきました。やっぱり一人でご飯は避けたかった模様で、こっちはもう食べ終わっちゃったんだけど、せっかくなので市内にお付き合いしました。彼女(N嬢)は、なんとこないだのメルボルンにも行ったそうなんだけど、生レース観戦はそれが初めてで、今回2回目だとか…。で、すっかり病み付きになってしまったって。「失業中なのにいいんですかね〜」とふわりと笑う感じがとてもチャーミングです。そういえば、バスで隣の席だった子連れ家族の奥さんも、「私たち本当のレース見るの初めてなんですよ」って言ってました。うわ、うらやましい。初GPが海外なんて。みんな。





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