猫の足跡
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2003年04月29日(火) |
合計130EUROも使ったミーハーです。 |
今日は、初めて迎える平日。やっと、正常に機能している町(これでもスペイン第3の都市)を見ることができた。ビジネスマンが多く、お店も結構賑わっていて、ちょっと安心。
まず、はじめにスニーカーの中敷を買いに行く。デザイン重視で底が布で覆われている安物を履いて来たせいか、連日ガシガシと歩いているうちに底が破れてしまったのだ。破れて縒れた布が当たったため、足の裏にマメが出来てちょっと痛い。幸い、市内には靴屋が多く、スポーツシューズの専門店もある。が、ここで、大きな問題が…。果たして、「靴の中敷」とはスペイン語でなんと言ったらよいのだろう? 辞書を引いても該当する単語は見当たらない。英語では「インソール」だなあ、と、「中、ひらめ」を調べてみるが、ちょっと違うだろうなぁ。中=インテリオールだけど、屋内みたいな感じだなあ。など、街角で辞書片手に考えることしばし。 まあ、とりあえず、これでいってみよう、と「靴の中に入れる敷物」と言ってみるが、うまく伝わらない。「中の靴」=スリッパと思われてしまうのだ。うむむ。 スニーカーをメインで置いている2件の靴屋で「ない」と断られたので、最終手段、メモ紙に絵を書いて、デパートで聞いてみると、絵を見てすぐに出してくれた。やはり絵は強い。早速、靴に入れて、ようやく快適に歩けるようになった。
さて、せっかくスペイン随一のデパート、エル・コルテ・イングレスに行ったので、取引先のおっさんに頼まれた「高級タイル」を探してみると、驚くほど高い。良い陶器は高いと聞いていたけれど…。さすがに、おっさん、ちゃんと相場を知ってるわけね。「1万円くらいの高いやつでいいから」とおっしゃってましたが、たしかに、ちょっといいなと思うとそれ位の値段だわ。値段的に、すぐに手を出す気にもなれず、ちょっと様子を見ることにする。スペイン陶器の本場バレンシアには、国立陶器博物館もあることだし、そこで目を養った後、観光案内所でいい陶器屋さんを教えてもらって比較してみようと考える。
この取引先のおっさん、陶器に絵を書いている奥様にプレゼントしたいから…というお土産ねだり。日頃から気さくで楽しい人なのだが、こういう愛妻家的姿を知ると、よけいに好感を持つ。正直、割れ物&重い飾りタイルなんて迷惑な話だけど、つい、がんばって探してしまう気になる。 もしかすると、奥さんとしては、本というか写真集みたいなものの方がうれしいのではないかと、ついでに1Fの本屋で聞いてみるけれど、残念ながらなかった。バレンシア(および近郊)の特産工芸品なんだから、そういうものがあってもよいと思うし、本屋の店員さんもかなりがんばって探してくれたのに、見当たらない。なんでだろう。 ※この買い物は楽だった。「飾りタイル(アスレホ)」という単語と「陶器(セラミカ)」という単語で、彼らも「バレンシア(マニセス)の焼き物?」とすぐに理解してくれる。 ※本屋には他にも数軒立ち寄ってみたが、どこにもそういう本はなかった。もったいない。
ちょっと残念に思いながら、国立陶器博物館を目指す。徒歩で10分弱…のはずなのに、なかなかたどり着かない。地図を見ていると、身なりの良い初老の男性が「どこに行きたいのか?」と声をかけてくれた。「陶器博物館に行きたいのです」というと、道々、周りの建物についてを案内しながら、連れて行ってくれた。そして、「これを見終わったら、神学校の博物館やラ・ロンハも面白いよ」教えてくれた。非常にありがたく、お礼を言った。
陶器博物館はなかなか面白い。特に、最後の部屋にある、「バレンシア地方の伝統的な台所」が良かった。飾りタイルをふんだんに使った台所がとてもとても可愛い。元は貴族の住居だったという建物自体も素晴らしい。難を言えば、「中国の部屋」というところに、中国製の陶器に加えて、明らかに江戸後期か明治時代に輸出用として作られたと思われる日本製のコーヒーカップなども混在していたこと。やはり、こちらの人にとって、東洋というと一括りなんだろうなあ。その部屋で一緒になった初老の夫婦が、こちらをちらちらと見ているので、「これは中国、これは日本、で、この絵は中国の英雄(たぶん関羽)、こっちは詩を詠んでる日本の貴族(源氏物語絵巻の図柄)。これは、7人の幸運の神様(七福神の図柄)で、お金や芸術など、それぞれ得意分野があるんですよ〜。このキャビネットは中国の薬をいれる戸棚です。」などとできる範囲のスペイン語で解説してあげると、「みんな中国のだと思ったら違うのね。あなたは芸術専攻の学生さん?」とえらく感心されてしまった。ち、違いますってば…と青ざめる。
というわけで、バレンシア周辺の陶器に関して、高級品とはどんなもんか大体理解して、博物館を出る。入り口で陶器に関する本を販売していたが、字ばかりで6000円という値段なので見なかったことにする。
その後、市場に出かける。活気にあふれていて、それぞれの小さな店が、それぞれの品揃えでお客さんを待っているのが楽しい。果物屋、八百屋、ハム・チーズ屋、肉屋、魚屋、乾物屋など。魚屋もさすがスペインだけあって、欧米には珍しい充実振り。白身風だけどいやにグロテスクな顔をした細身の魚がいるなぁ、と思ったら、それは小学校の給食でさんざん食べさせられた「メルルーサ」だった(今も給食に登場いるのだろうか?この魚)。なるほど、こんな外見だから小学校では切り身ばっかりだったんだ!と納得。 果物屋にびわが沢山出ていたので、ちょっと買ってみた(あとで食べたら、むちゃくちゃすっぱかった。ちぇ)。「5こちょうだい」と言ったら、おじさんに「5キロ?」とからかわれてしまった。こっちの人はこれだからもう。 市場の外に屋台が出ていたので、地元名物「オルチャータ」という飲み物を買ってみる(0.9euro)。なんでも、カヤツリグサの根っこでできた飲み物だそうだ。冷たくておいしいけれど、ちょっと甘い。強いて言えば甘い豆乳か、きな粉ココアか?
市場のあとは、バレンシアCFのオフィシャルショップへ。今日はこのためにカードを持ってきたのだ!ふっふっふ。 場所は、さっき買い物をしたのとは別のエル・コルテ・イングレスの前。一等地になかなか良い店を構えていることに驚く。ただし、お客さんは非常に少なく、がらんとした感じ。 1Fは、ナイキ中心の正式ユニフォームとポスター、地下は、その他小物、Tシャツなどいろいろなグッズ、という構成になっている。 背番号入りのユニフォームがほとんどないので、恥ずかしながらお店のお姉さんに「背番号21のユニフォームがほしいんだけれど」と聞くと、「サイズは?あなたが着るの?」と聞いて、白いユニフォームの小さめのを出してくれた。「レシートを地下に持っていくと、背番号をプリントしてくれるわ」と。なるほど、というわけで、今にもレジを打ちそうなお姉さんに、ちょっと待っていてもらい、Tシャツ、アイマール君の等身大ポスター(正直、こんなもの買うのは非常に恥ずかしかった!)と、子供用のユニフォーム(友達の息子に着せるのだ!)を追加すると、お姉さんは、「それなら、こっちのセットのほうが可愛いいわよ」とおそろいの短パン・靴下まで入った箱を見せてくれた。うわー、可愛い!と理性が吹っ飛び、ミズテン買い。 お姉さんってばうれしそうに、「たくさん買ってくれたから、これ、サービスね!」とオフィシャルのボールペンを2本袋に入れてくれた。「地元チームを応援してくれるのって、すごくうれしいわ」だそうである。いい人だ〜。こんなおまけボールペンなんて、絶対に書きにくいに決まってるけれど、それでもうれしい。
※バレンシアは、観光客が少ない上、住民の生活レベルが比較的高めであるせいか、非常に親切な人が多い。街中で地図を見ていれば、かなりの確率で「どこに行きたいの?」と聞いてくるし、近くなら、一緒に連れて行ってくれたりする。最初は、いわゆる観光客目当ての「たかり」や「客引き」または「ナンパ」かと警戒していたけれど、みんな単なる親切だった。こちらのでたらめなスペイン語に嫌な顔もせず、理解してくれようとする姿勢もすごくうれしい。
とりあえず、大荷物になったし、カードや現金を持ってふらふらするのもなんなので、一旦、宿に戻ることにしたが、その前に、今回の旅で初めて「レストランで」「まともに」食事をすることにした。
お昼がメインのスペインでは、多くの店で「今日のコース」を用意しており、1皿目、2皿目+パンと飲み物。そしてデザートとコーヒーという構成になっている。コースの料理や飲み物はいくつかの中から選べる仕組みになっている店が多い。料理はたいてい、外の看板に書かれている。 ここも、そういうシステムだったので、安心して入り、席についたが、店員のお兄さんが来て、いきなり料理の説明をし始めてオーダーをとろうとするのでちょっと慌ててしまった。 なんでも、メニューは外に書かれているだけで、紙に書かれたものは持っていないのだそうだ(※観光客向け以外のほとんどのレストランでは、そういう仕組みらしい) 仕方ないので、聞き取れた料理から注文することにし、バレンシア風サラダ、何だかよくわからないがお兄さんのおすすめ肉料理、赤ワイン、りんごの何とか(聞き取れなかった)、カフェオレ(こちらではカフェ・コン・レチェという)を頼んだ。 ドキドキしながら待つこと15分。バレンシア風サラダとはどんなものかと思えば、レタス、トマト、ツナ、卵、たまねぎ、オリーブという、わかりやすいものであった。なるほどね〜海と太陽のサラダってイメージだなあ。ドレッシングはなく、そのかわりに、オリーブオイルと酢、塩・胡椒の瓶が出され、自分で好みの味にするのがスペイン流らしい。油べっとりで味が濃すぎるドレッシングがかけられ、ぐったりしたサラダが出されたときの悲しさがないので、うれしい仕組みだと思う。 次に運ばれてきたお兄さんのお勧めメインは羊のスペアリブ。なかなか美味。そして、特筆すべきはデザートの、りんごの赤ワインコンポート!おかわりしたくなるほどの美味しさ、う〜ん幸せ。 1皿が大きいと聞いていたとおり、サラダとデザートは日本の2倍見当。でも、メインは普通の量だったなあ。ただし、私は野菜食いで、サラダだったから問題なかったのかもしれない。近くのテーブルで出されていた1皿目のパエリアは十分それだけでお腹いっぱいになる量に見えた。10EUROでこれならお得だなあと思いつつも、他の物価が安いので、実際はどうなんだろうとも思う。
午後は、ホテルに戻って休憩した後、腹ごなしを兼ねて水族館に向かうこととする。ホテルからは歩いても行かれる距離のようだけれど、連日のハードウォークに、足が悲鳴をあげているので、とりあえずバスに乗った。 12月にオープンしたばかりのこの水族館、聞くところによるとEU最大の規模だそうで、バレンシアが誇る「科学と芸術の町」構想の中核をなす施設だとのこと。ホテルからも見えるバブリーな建造物は、近寄ると更にすごい。昔は川が流れていたという、バレンシア市中心部を囲む広く細長いグリーンベルト…というか原っぱに、突如出現する巨大建造物…まさに、あの何もなかったお台場に、突如フジテレビだのテレコムセンターだのが、ニョキニョキとできた頃の日本の風景を見るようなのだ。 この風景は、どう考えても、スペイン第3の都会感覚というよりむしろ、田舎チックな「万博」的思考回路から生まれているのではないか、バブル期日本で数多生まれた「ウォーターフロント計画」「○×構想」の多くが破綻し、趣味の悪い建物だけが赤字を垂れ流す構造になってしまうのではないか、そして、古く美しいバレンシアの街並みが秩序なく変貌してしまうのではないかと、広がる次の建物の工事現場を見ながらlp心が痛んだ。 ワタシの単なる感傷だといいのだけれど。
さて、バス停を降りて、まっすぐ歩くとやがて入り口だ。入り口付近には、観光バスがたくさん止まっており、子供から老人まで団体さんが次々と乗り降りしている。入場口も団体さんによる混雑(阿鼻叫喚って形容が良く似合う)で、ちょっと気圧されてしまい、端の方にある個人窓口にとぼとぼと向かった。 入場料は約2EURO(2600円)。結構高いなーと思っていたら、券売所のお姉さんが何事か言っている。聞き返したら英語で「学生証を見せれば割引になるけれど、持っている?」とのこと。いやはや。「今年34になりますが、いくつに見えますか?」と聞きたくなってしまった。
水族館は、なかなかすごい。回遊する水槽(オナガザメがたくさん!!)や、海底トンネル、海獣コーナー、水鳥コーナーなど色々バリエーションに富んでいて、見ていて飽きない。3時間コースのガイドツアーもある。 日本からは、タカアシガニが代表選手となっており、子供たちが「うぇー、すげぇでかいよ」「気持ち悪〜い」など大騒ぎしていた。で、それはいいのだけれど、あのでたらめ日本語はなんとかならないものだろうか?北斎の富嶽三十六景に、「つきち」とひらがながでたらめに配置されている(“き”の字なんて横向きに寝ている)ところから始まって、あとは意味不明の連続。海女の解説がされている文章に、応挙の幽霊みたいな絵がついていたり。そして、果てしなく続くでたらめ日本語。よっぽど受付に言って訂正しようかと思ったが、なにをどう直してやればよくなるのかすらもわからないので、黙殺した。ああ、誰かスペイン語が堪能な日本人よ、訂正してやってくれ〜!
それにしても、大繁盛である。まだオープンしたばかりだからなのかもしれないけれど、次から次へと個人・団体が来るわ来るわ…。そして、まあみんなマナーの悪いこと。フラッシュは焚きまくる、ガラスはたたく、走り回る、見ている人を押しのける…ちゃんと「フラッシュは焚くな、ガラスをたたいたりして魚を脅かすな」とそこらじゅうに看板が出ているのにもかかわらず、ぎゃーぎゃーと大騒ぎなのだ。基本的にスペイン人はおおらかで親切なかわりに、マナーが悪いというか自分勝手なところがある(たとえば、道に広がって歩く、割と平気で人にぶつかる、列に並ばず割り込む、など…)と思っていたが、その真髄に触れてしまったようだ。彼らの集団心理ときたら、日本人どころではないと思う。ただ、違うのは、それに乗らない人もちゃんといて、それはそれで「我関せず」「我が道を行く」であるところ。あとは、そういうマナーにうるさい大人が、自分のそばにいる子供には注意するところか…(でも、ぜんぜん聞きやしない子供もまたスペイン気質かも)。
そういうお客に囲まれた魚や鳥、海獣はかわいそうだなあ、と思う。が、彼らも案外ラテン気質のようで、安楽に構えているようだ。オットセイかトドのような海獣が8頭ほど群れている島があって、そこで見ていると、ずっと喧嘩しっぱなしで大丈夫かと思うほど。一番弱い一頭なんて、陸にあげてもらえなくて半分水につかりっぱなしで、「ストレスのせいなのかしら、かわいそう」なんてに思っていたのに、帰りに見たらみんな仲良く折り重なって眠っていたのだ。こんなのあり?と拍子抜けした。
さて、午後6時30分からは最大の売り物というイルカショー。 みんな6時前(早い人は5時30分くらい)から席に集まり始めた。6時15分にはもう満席に近くなって、ガンガンとノリの良い音楽がかかり始める(クイーンやフレディー・マーキュリーの曲などもかかり、ちょっとうれしい私。いまだに人気があるのだろうか?バレンシアCFのハーフタイムでも行進曲がBreak Freeだったし)。観客も手拍子などたたき始めた(ついでにイルカも勝手にウォーミングアップを開始。利口なんだなあ)。
「いい雰囲気だなあ〜」と思っていると、突然、DJが登場! 一気に場内がノリノリに…。このDJ、とにかく乗せるのがうまい。そして、観客も乗るのがうまい。どうやら「今日は来てくれてありがとう!これからイルカショーが始まるよ!今日、イルカと遊ぶことのできる人は2人!遊びたい人はいるかな?」っていう感じのせりふを言っているらしい。観客(特に子供と若者)は、みな「イエー」と手をあげて立ちあがり、音楽に合わせて踊り始める。総立ちになる一角もあって、すごい状態だ。 用意されている長靴は子供用なんだけれどそんなことはおかまいなしらしく、美人のおねぇちゃんが、腰を振るわ胸をゆするわ、なかなかの見もの。負けじと子供も腰をくねらせてなかなかの踊りを披露するわけで、この年からこういうのをやってりゃあ…と思うひと幕。 DJはひっぱるだけひっぱって、きっちり時間の6時30分までに2人の子供を選んだ。その展開のうまいのなんのって、ちゃんとしたショータイムになっているからすごい。これが楽しいからみんな早くから座ってたんだなあと感心した。こういうのは日本でもやったらいいと思うけど、観客がここまで乗れないか。これだけでも十分元を取った気がした。
ところが… いざ、イルカショーが始まり、6頭のイルカが登場すると…、まともに「ショー」を見せられるのはたった2頭。あとはまだまだ訓練中で、うまい2頭も日本のイルカショーに比べると、ちょっとレベルが低い感じ。うーんなんだかなあ。この観客に、日本でやってるイルカショーでも見せてやれば…と非常に惜しく思ってしまった。
宿に戻ると、もう9時すぎだった。これから外に出て食事をするのも面倒なので、ホテルのバルで簡単にサラダとチーズ、ワインで夕食を済ませる。ホテルの人とは、だいぶ顔見知りになったので、いい感じにくつろげるようになった。 それにしても、連日朝から晩まで遊んでいるので、ちょっとアクセルを緩めないと、後で辛くなりそう。明日からはポコ・ア・ポコで行こう。
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