猫の足跡
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2003年04月30日(水) パテルナの敗戦

 今日は、朝からどんよりしてうすら寒い。予報が当たったのはバレンシアで初めてだ、…ということは雨が降るのだろうか?今日こそは、バレンシアCFの練習場に行こうと思っていたので、天に祈る気持ち。(昨日や一昨日は、祝日前後で練習がない可能性も高く、断念した)

 まあ、今日は確実だろうと踏んで、いざ出発。とはいうものの、まず、どうやって行くかを考えなければならない。

 バレンシアCFの練習場「Ciudad Deportiva(直訳するとスポーツの町?)」は、お隣のパテルナ市にある。バレンシアCFのサイトで調べると、車が一番おすすめの交通手段である様子。確かに場所は高速道路のインター脇にあるようだから当たり前か。その他は…というと、バレンシアの駅前から10番のバスで…???ってそれはどう考えても、普段試合をやっているメスタージャスタジアムへの行き方では????という内容。そして、最後は地下鉄の郊外線パテルナ駅から行かれないこともありません、…???と。うわーん、にわか仕込みなのでスペイン語のサイトはつらいっ!!

 日本語のサイトでは、とあるバレンシアファンの方がサイトで「タクシーで20EUROくらいだった」と書いているのを発見した。ただし、タクシーの場合は帰りが問題らしい。流しのタクシーが来ないので、電話で呼ぶか、あらかじめ、迎えに来てくれるよう行きに交渉するか…という技が必要とのこと。スペイン語堪能ではない私にはちょっと無理なご相談。しかも、やっているかどうかもわからない練習を見るために、往復で40EURO(5000円以上)を払う気にもならない。だって、観戦のチケットが28EUROだもの。ああ、一人旅はこういうときに辛いんだな〜。

 というわけで、私に残された選択肢は「パテルナ駅から徒歩(またはタクシー)」というものになった。仕方ないので、とりあえず、駅前に行き、パテルナの地図を買い、地下鉄に乗り込んでパテルナに向かった。

 #4の地下鉄は、郊外線。少しすると地上を走り出した。客層は、いかにも都会人中心の#3とは明らかに違い、郊外の住民+学生ばかり。風景も観光客を拒む荒れた原っぱ、生活間の漂うアパートやマンション、畑、と本当に心細いほどの外国人気分を味わえる。電車や駅のつくりも、気合が入ってキレイキレイな#3とは違い、生活観が漂っている。

 乗ること15分程度だったろうか、パテルナ駅にたどりついた。駅舎はちいさな無人待合所のようで、誰もいない。一緒に降りた人にでも聞こうかと思ったが、とりあえず地図に「Ciudad Deportiva」と書いてある方向に歩いてみることにした。途中の道も本当に住民専用という感じで面白い。市場もすごく小さい「マーケット」という感じだし、教会もこじんまりとしている。ちょっと心細くも、楽しくお散歩をした。

 さて、20分ほど歩いたら、とりあえず目指した高速道路につき当たり、それを越えたところが目的地!…のはず。そして、高速道路の向こうにはそれらしき施設がある!!!やった!と思ったのもつかのま、人気がなさ過ぎる。ひょっとして、今日は練習がないのだろうか?と不安な気持ちで高速道路の下をくぐって近くまで行くと、おじいさんが一人通りかかった。

 私;「すみません、ここは、Ciudad Deportivaですか?」
 おじいさん;「ここは、Ciudad Deportivaだけれど、Ciudad Deportivaは2つあるよ。
        君の行きたいのはCiudad Deportiva VALENCIA CFじゃないかい?
        だったら、ここからかなりあるよ」
 私;「か、かなりって、歩けますか?」
 おじいさん;「うーん、ちょっと難しいねぇ」
 私;「そうですか、じゃあ、駅に戻ることにします。おじさんありがとう」

 ががーん。そ、そんなぁ。

 地図をもう一度よく見ると、別の場所に確かに「Ciudad Deportiva VALENCIA CF」という文字が…。パテルナの駅からはぜんぜん離れた、市のはじっこの方に!

 今から行こうにも、通常10時スタートの練習には間に合わないだろうなあ。午後は練習あるかどうかもわからないし…涙。うなだれて駅までとぼとぼと歩く道の長いこと。ずっと下り坂でよかったが、ぼけーっと歩いていたら犬の糞を踏んでしまって、これこそ踏んだり蹴ったり?

 しおしおとメトロに乗って市内に戻る。今日は、ほかにあまりやることもないので、買い物をする。ラ・ロンハなどの建物を見ても良いのだが、スペイン語の解説を読むのがかったるい感じがしたので(すでに欝に入りかかっている?)、パスすることに。

 買い物の目的は、昨日も探した「飾りタイル」。どこで買うのが正解か、今ひとつよくわからない。そこで、とりあえずは、観光案内所に行って、「手書きの飾りタイルで、ちょっと良いものを買いたいのですが、どこで買うのがお勧めですか?」と聞いてみた。すると、「小さいものは土産物屋にもあります。もうちょっといいものだと、陶器専門の土産物屋が集まっているところがココ(地図に書き込む)にあります。それから、手書き作家の工房を兼ねた店がココにありますから、そこだとかなり良いものも買えます。その店ではアンティークタイルなども扱っていますよ」と親切に教えてくれた。観光案内所のお姉さんは、なかなか美人で感じが良い。

 さっそく、陶器専門の土産物屋が集まっている一角に行ってみた。置いているものはピンキリで、明らかに大量生産で手を抜いたとわかるようなレベルから、デパートで見たものに近いものまでさまざまである。で、値段もさまざま。さすがにちょっといいな、と思うものを見せてもらって聞くと、デパートの8掛けくらいの値段を言う。「高いね」とオバサンに言うと、「でも、これはいいものだから。ほかのと違うでしょ。手書きなのよ」と食い下がり、もう少し小さいのや手書きでないものを持ってきてくれたりする。
 何軒か見て回ると、まあまあのものはあるけれど、だったら説明書きだのがちゃんと付いていて、額に入っているデパート物のほうがいいなあと思う。

 次に、工房を兼ねた陶器屋を覗いてみると、こちらは数も多いし、なかなかである。作品としても結構いいものが多いし、18世紀のアンティークもなかなかのものだ。値段的には、デパートと同等。やはり、ちゃんとしたものはいい値段するのね。で、候補を2枚に絞ったものの、どちらか決められない。そうこう言ううちにシエスタの時間になったので、とりあえず、お昼を食べてから、もう一回デパートのものと比較して、冷静な目で決めることにした。

 お昼ご飯は、奥のカテドラル前の広場にあるカフェテリアで。お昼の定食が8EUROとなかなかお得。ビールにサラダ、今日は子牛肉、コーヒーとデザート。残念ながら期待のデザートはバナナ1本だった。悲しい。安いのは安いなりなのね〜。

 昼からテラスでビールっていう気持ちよい習慣に馴染んでしまうと、昼休みが長くなってよくない。ただ、そうやって、気持ち良く広場を見ながら休んでいると、気持ちが大きくなってきて、「まあ、バレンシアの練習を見るんだったら、また来ればいいさ。今度は、観光なしの短期でもいいし。ああ、もっとあったかい季節にアリカンテに行くのもいいなあ」などと、午前中の悲しい出来事が少しずつ浄化されていくのだった。

 すっかりくつろいだあとで、デパートに向かうと、そこには昨日とは違い、やる気満マンの素敵なおばちゃん店員がいて、「これなんかどう?」と次々とタイルを並べてくれるわ、スペイン語で色々と説明をしてくれるわなので、ココで買うことにしてしまった。いやあ、その情熱たるや!脱帽ざんす。

 最後まで迷ったのは、鳥の絵柄2つ(鶴と普通の鳥)、魚の女神?の3枚。おばちゃんが「これがキレイよ」と勧めたのは、鶴の絵柄。確かに可愛いのだけれど、どうもJALのマークみたい…って所が気にかかる。もう1枚の鳥は非常に凝っていて、多分これが一番手がかかっていると思われる図柄だが、ちょっと、「花札」系(笑)。そして、最後は、頭に冠を付けた女性が大きな魚を両手に1匹ずつ持っているもの。ちょっと志功系の女神が良くて、個人的には一番気に入った。ただ、「絵」になってしまっている(「タイル」を期待されるとつらい)のと、絵がいいだけに、背景などがシンプルで、ほかと比べると手が少ない印象があるのだ。

 迷った挙句に決めたのは、一番手がかかっていそうな「鳥」。趣味は別として、「いいものだな」とは思ってもらえるだろうから。贈り物だというと、おばちゃん、気合をいれて包んでくれた。「家に持って帰るのよね?どこ?日本?中国?」「そう、日本から来たの!世界の向こう側だわね!じゃあ、割れないよう、注意して包まなきゃ!」って具合。ただし、できあがった包みは、輸送用梱包としては優秀だけど、贈り物としては、う〜むむむというシロモノ。まあ、仕方ないか。

 メインの買い物が終わってしまったら、特段やることもなくなってしまったので、ちょっとデパブラ。お土産になりそうなものを探してみたりしてみる。髪止めなんかを買ってみたりした。そのあとも、また、最後のテラス休憩。最後は、ケバブの店に入ってみたが、とてもおいしかった。

 そういえば、バレンシア名物パエリアの麺類版、食べなかったなあ。これも次回か。

 明日は朝8時30分過ぎ電車でバルセロナに向かう。ホテルのバルでビールをグラスに貰って部屋に持ち帰り、バルコニーから暮れてゆく街を見つつ、別れを惜しんだ。

 何がある、っていうような街じゃないけれど、ホントにいいところだったなあ。また来よう。バレンシア。


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