2002年04月29日(月) |
リムレスの空 魚住くんシリーズ5 |
本当によい話でした。もう終わってしまうのかと思うと寂寥感が…。 恐怖から逃げない、傷ついても自分独りで恐怖と向き合うことを止めない。好きな人たちと離れることでその存在を失うかもしれない、それを怖れている自分に気づき、そんな弱いとすら思える自分を見つめることを止めない。それは彼の強さでした。 どんなに傷つくことがあっても折れることなく、むしろ強くしなやかに伸びていく彼から目を話すことはできません。彼がそうやって生きていく限り、彼の友人は彼を愛しつづけるでしょう。 このシリーズから教えられたことがたくさんありました。このシリーズを通して、人間同士ほんとうに分かり合えることは少なくて、でもだからこそその繋がりを断つべきではないのだと感じました。
河の勢いに流される木の葉のように生きていくのだろうと――思っていた。 だが今、それでは嫌だと思い始めている。 魚になりたい。 小さな魚でいい。濁流に揉まれ、岩に叩きつけられ、鰭を削りながら、どんなに不器用でもいいから自分の力で泳いでみたい。(略) 追い風が吹く。 潮の流れが変わる。 小さな魚になって、河から海へ泳ぎだそう。
榎田尤利:リムレスの空 魚住くんシリーズ5,p.199-200,光風社出版.
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