 |
 |
■■■
■■
■ 日常からの逃亡癖
かなり唐突に、そして頻繁に、私の脱線癖が顔を出す。 両足で立っているこの場所から、不意に降りたくなるのだ。 ひょい、と。
午後、ふたたび天王洲へ撮影に行った。 先月の撮影分に追加のイラストが必要になったのだ。 いつもはオフィスに幽閉されている時間帯に、マフラーも手袋もせずに外へ出る。 日差しはすっかり春めいていて、今のところ花粉症とは無縁の私にしてみれば、 なんとも気分がよかった。昼間の電車は空いているし、どこか遠足列車のようだ。
遠足列車。 子供の時に乗ったそれは、非日常そのものだった。 たいくつな学校から、生活から、ぐんぐん離れた場所へ連れて行ってくれる。 窓から流れる風景、友達のはしゃぐ声、やわらかな空気。高揚感と刹那。
大人になってからは、遠足列車のような温度の電車に乗り合わせると、すこしだけ せつない気持ちになる。もう戻れない地点に来てしまったことに、すこし哀しくなる。 それでも、うららかな午後の電車は、あの時の非日常性にどことなく似ていた。
浜松町からモノレールに乗り換え、ふわっと揺られ宙に出る。 このまま羽田空港まで行ってしまいたかった。 轟音をとどろかせ離陸してゆく巨大な鳥たちを見たくなった。
でも大人になってしまった私は、次の駅で降りて、ぐんと伸びたビルへ向かう。 ぎゅっとひねり潰した逃亡癖を、エスカレータの下にあるゴミ箱へぽいと捨てる。 そこで、私の細胞がわたしに話しかける。アナタはいつか、やってしまうね。
ひょい、と。
2002年03月04日(月)
|
|
 |