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■ 未明の入浴
昨夜のこと。 いただいた白ワインが美味しくて、ぐびぐび飲んでいたら猛烈な睡魔に襲われる。 あらあらと千鳥足のまま、顔を洗って歯を磨いてパジャマに着替えてベットに潜りこむ。
だがしかし、肉体は眠りの闇を深々とのそき込んでいるのに、 意識は気泡が混ざっていない氷のように、透明に覚醒している。 カラダはぼんやりと眠いのに、意識がぜんぜん眠ろうとしないのだ。 これは困った。
眠気を誘うようなCDを流しても、ベッドサイドの本を眺めてみても、 わたしの意識はどんどん明瞭にその輪郭を露にする。 なので、眠ることを諦めてお風呂に入ることにした。 時、すでに午前3時を回っている。
酔いは脳裏に薄い膜のように貼り付いていたけれど、意識明晰この上なし。 眠りと格闘するのは、自分の影と戦っているようなものだ、と思う。 影は影の好きにすればよい。私はわたしで好きにするさ。と腹に決める。
グリーンティという名のついた巨大キャンドルを浴室に持ち込み、 超短編小説集 "Sudden Fiction" を何篇か立て続けに読んでみる。 現代アメリカ小説家たちの、ごく短い枚数で、込み入った内容のストーリーは、 「ドタン、バタッ」と展開し、脈絡は完全に無視され、突然終焉する。 いや、始まりも終りも、そんなものは最初から存在しないところに良さがある。
そうしてゆるゆると未明の入浴から出たら、時計は早朝4時半を指す。 と、突然眠りが素早く意識を包みこみ、濡れた髪のまま私はベットに気絶した。
メイルの着信音で目が覚める。 「仕事が山ほど届いています。大忙しです」 上司の文字にはたと首をもたげ、時計を確認すると午前10時。 ぼんやりと身体を起こし、ちと考える。 さて、これは誰のせい?
「とてもサラリーマンの生活じゃないわね」 と、話を聞いた友は苦笑する。私も苦笑する。 モチロン、私のせいなんかじゃない、と確信しながら。
2002年04月11日(木)
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