月のシズク
mamico



 「速くせず、できるだけさりげなく」

なんだか、完全にヤられてしまった。
誰に?ナニに?どんなふうに?

マーラーのシンフォニーの、音とリズムに
あろうことか、どっぷりと心酔してしまったのだ。

7月の本番のための練習が開始している。
私は何だかんだと理由を付けて、半ば辞退しようとさえ思っていた。
「一度くらい弾いてみるか」と、夕方、チェロをかついで電車に乗る。
記念受験、ならぬ、記念演奏、という実に軽いノリだった。
なのに、まんまと自分に掛けた罠に引っ掛かってしまった、ということです。

交響曲第7番は、プロオケでもあまり演奏されない超マイナー曲である。
5楽章=80分の大曲。譜面を製本したら、とんでもない厚さになった。
おまけに、めちゃくちゃ難しい。

初見の譜ヅラは、記号の羅列にしか見えず、たちまち硬直する。
弾けないところは「ちゃんちゃかちゃーん」だの「るるーる、るーる」と歌い
あとは、ただただマーラーの世界に浸る。ちゃぷちゃぷと、浸る。

譜面にはドイツ語やらイタリア語やらで、演奏指示が書かれている。
「速くせず、できるだけさりげなく」というドイツ語があった。
演奏家には「速く弾くな」と窘め、でも観客には「おおっ、はえっ」と思わせろ、
ってか?マーラーさん、なかなかそなたも悪やのう、とにやにやしてしまった。

しっかし、当時のマーラー氏はまさか死後何100年以上も経てから、
日本のアマチュアオーケストラが演奏すると思って作曲してなかろーに。
とーぜん、アタシもソレにヤられるとは思ってませんでした。
ええ、惚れたからにはのりますよ、次回。


2002年04月14日(日)
前説 NEW! INDEX MAIL HOME


My追加