月のシズク
mamico



 依存型資本主義社会

現在、私が身を置く周縁で(いや、実際は私が周縁に身を置いているんですけど)
ちょっとおもしろいことが起こっている。当事者たちにとっては、やや厄介なこと。

私がアシスタントを務めている教授が、夏にある特集本を出版することになった。
半年間ある雑誌で、「白い影」(主演:中居正広)の批評分析を連載したところ、
ファンの間で発生した「NN病」という現象名が一般的に氾濫し、ついにはTBSが
半年前に閉鎖された掲示板を再開し、関東地区で再々放送を始めている。
制作・放映したTBS側が完了したはずのドラマを、視聴者の熱意が湖の底から
もう一度水面上に引き上げたのだ。なぜか?語りきれないドラマの意味を探すためだ。

結果、「白い影」の原作者渡辺淳一氏をはじめ、TBS制作プロディユーサの鴨下氏、
企画の伊佐野氏、プロデューサーの三城氏、演出の吉田氏、共演者の白川和子さん
らがこの企画に賛同し、堰を切ったように作品と中居について語ってくれた。
側で経過を見守っていた私としても、その動きには驚くばかりだった。

そして、この半年分のインタビューおよび原稿を1冊の本にするのだ。
PSIKOの出版社である冬樹社は一般の流通経路に製品を乗せていないので、
大手の出版社に依頼することになる。そこでA社とB社が名乗りをあげた。
いずれも業界最大級の出版社で、バタバタと倒産する出版業界の中でも不動である。

まぁ、それはそれとして、この両者のやり方がオカシイ。
A社は中居正広が所属するジャニーズにお伺いを立て、B社は「白い影」制作者の
TBSにへこへこしている。とにかく「ジャニーズさま」「TBSさま」なのである。
ノベライズ本や中居本を出すわけでなく、内容は純然たる批評書だというのに、
やたらと権力にすがろうとする。肝心の原稿はココにあるのに、ココは彼らの眼中に
なく、とにかくお上がOKを出したら成功だと思い込み、上に手を合わせる。
どこを見ているのかしら、と不思議に思う。とんでもない方向音痴だ。

わたしもサラリーマンをしていたので、資本主義のハエアラキーやら何やらには
多少経験がある。でも、PSIKOという雑誌は広告収入やメディアのバックアップ
なしにコツコツと自分たちがやりたいことをやってきた。どこからの圧力もなく、
語りたいことを真剣に、正直にカタチにしてきた。その結果、学術本など見向き
もしなかった中居・直江ファンの方々が反応し、どんどん「語るための言語」を
掴んでいった。そのページには中居くんの写真が一枚も貼られていないというのに。

そんな周囲の騒ぎを眺めていて、日本の社会ってのはつくずく依存型なのだと実感する。
わたしはぜんぜん無関係の第三者(傍観者)でしかないのだが、こういう手口を
見ていると、いつの時代でも「いいものを作りたい」という個人の情熱とモノと
成果が直結するような社会でありたい、と切に願わずにはいられない。

自分はジブンの足でしか立てない、
ということを忘れてしまった大人ばかりなのが、すこし哀しい。


(このテキストは誹謗中傷の類ではなく、一個人の自由な意見です)

2002年05月15日(水)
前説 NEW! INDEX MAIL HOME


My追加