月のシズク
mamico



 ソレが降りてくるとき

詳細は控えるが、急遽、今月中に原稿を書き上げろとの指令が下り、
「とにかく10枚書いて持ってきて」と言われたのが、おとといの夕方。
こりゃ大変だ、と頭ではわかっているものの、心の方は至って平穏。
だが、見えない触覚がこの短い期間で、ぎゅんぎゅん動いていたらしい。

昨夜、南の空高く、薄雲の向こうに月あかりが見えた頃、
何の前触れもなく、ソレは私の中にすんと降りてきた。
これだっ、と思った瞬間に、私はしかっとそれを掴んだ。
表現できないほどの戦慄と興奮がカラダ中を駆けめぐっていた。
東の空が白み始める頃、冷え切った部屋にペンを置く音が響く。

何かを本気で強く強く求めたときには、必ず向こうからソレがやって来る。
わたしはあらゆる神経と感触と感覚をクリアにして、ソレを見落とさぬように
なるだけ注意深くなり、その瞬間を間違えなくキャッチすればよいのだ。
もちろん「ソレ」とは、私に内在する "something" にすぎないのだが。

その瞬間に何度も出会いたくて、私はこのシゴトを選んだのだろう。
とにかく、そんなこんなで、最近の私の生活リズムは、変拍子を刻んでいる。



2002年10月25日(金)
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