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■ スターダスト
駅前でバスを降り、夜の空気の冷たさに身震いして、通りに面したバーガーショップ の灯りに吸い寄せられるように足を踏み入れた。店内は明るくて、あたたかくて、 5つのテーブル席は、近所のカップルや仕事帰りのサラリーマンで占拠されていた。
クラムチャウダーのスープを注文し、丸いカウンターの椅子に座る。 スープは想像していたよりもぬるくて、ちょっとしょっぱかった。 プラスティックのスプーンでくるくるかき回しながらのむ。 そして、今日のできごとを思い返してみる。
眼が覚めてすぐにのんだ「エキゾチック・ティ」という名前の紅茶や、 パジャマのまま顔も洗わずにせっせと刻んだ野菜たちのこと。 にんじんときゅうりとセロリとアスパラガス。 にんじんとアスパラガスは軽く茹でて、ぜんぶ野菜スティックにした。 それと、実験のようにして作ったディップ。マスタード味と味噌味の二種類。
それから、昨夜泊まっていった「妹」が急に財布だけ掴んで部屋を飛び出し、 ぷりぷりとした白い実を付けた枝と、薄ピンク色のガーベラを三本抱えて 帰ってきたこと。彼女はグレイの丈の長い、私のカーディガンを着ていた。
午後に教授の研究室で行われた奇妙なパーティのこと。 ビデオとDVDの配線がうまくいってほっとした。私はいつの間に「繋ぎ屋」に なったのだろう。久しぶりに食べたピザが思いの外おいしかった。 そして、今年初めて、白い薄手のダウンコートに袖を通した。皮の手袋も。 「スポーツ観戦に行くみたいですね」と笑ったトモダチの、優しい目元のこと。
あと、スタジアムのくりぬかれた丸天井の夜空に、すっと光が流れたこと。 六万人近い人々が振るペンライトの海も、もちろん、息をのむほど美しかったけれど、 ステージをそっちのけで、見上げた空に流れ星を見付けてしまったこと。 なんとなく嬉しくもあり、そして、しんみりと寂しくも感じた。東京の夜空。
そんないちにち。
2002年11月02日(土)
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