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■ ひきかけ、かきかけ、よびかけ中
午後、コーヒーと本をお供にベランダへ出る。 膝掛けをぐるぐると腰に巻き付けて、皮のコートまで着込んで完全武装をキメる。 しばらくして、部屋の女の子ふたりがベランダのドアを開け、私の姿をみてわらう。
「どうぞ、ごいっしょに」 コーヒーカップと本を横にずらし、彼女たちの場所をあける。 「風邪ひきました?」と聞かれ、「ああ、そうかも」と答える。 朝起きてから、あまりの酷い声に我ながら驚いた。喉が焼けるように痛む。 「なんだか、違うひとと喋ってるみたい」 私は熱っぽい喉の奥で、ひひゃひゃひゃ、と音にならない笑い声を立てる。
部屋に入ると、私のデスクに次々と貢ぎ物が届けられる。 喉の腫れ/痛みに効くという風邪薬、いい香りのする小ぶりのみかん、龍角散のど飴。 私はみかんを食べ、薬を呑み、飴を舐め、大きなくしゃみを立て続けに三回する。
「まだまだ今月は大変なんですから、あったかくして、ビタミンたくさん摂って ゆっくり休養してくださいよ。今週末は本番だってあるんですから」 そんな有り難い忠告をいただきながら、私はばぁさまのようにしゃがれた声で、 「どうもありがとう」とお礼を言う。そうなのだ。風邪をひいている場合じゃない。
20日までに原稿の締切が二本、今週の土曜にオケの本番が一本。 目下、風邪をひきかけ、原稿は書きかけで、コンサートのご案内を呼びかけ中です。 同じ「〜かけ中」でも、意味は全部ちがうのね。日本語って摩訶不思議。
2002年11月05日(火)
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