月のシズク
mamico



 奇妙な共同生活?

ひとあし先においとました研究室の忘年会の帰り道、イルミネーションに彩られた
住宅街をぽくぽく歩いていると、ピロロンとメイルの着信音がポケットで響く。

「今日、行ってもいいですか?」
送り主はさっきまで一緒にわいわい飲んでいた妹ちゃん。
電車もまだある時間だったけれど、こっちに帰ってきたいそうな。
ちょっと過保護で心配性で甲斐性ナシの姉、「いいよ」の返事。

午前零時に帰宅すると、シゴト帰りの編集長が今から新刊を届けてくれる
との連絡。その30分後、右側のライトを茶色のガムテープを貼り付けた
神戸ナンバーの深緑の車、ご到着。なんでも木にぶつけたそうな。(苦笑)
久しぶりに会う編集長は、休日返上の仕事続きで疲弊ガオ。眼の下のくまちゃん。

「愚痴は許さんが紅茶は淹れたる」などと、新刊と引き替えに茶を差し出す。
そこに、ピンポーン、と妹ちゃん、ご来店。ご帰宅?いえ、ご到着。(笑)
「ただいまー」と元気よく挨拶し、黒い皮のブーツを脱ぎ、てててと寝室へ
向かってゆく。その後ろ姿を、ぽかんと追う編集長のアホっ面。

「なんかジブンちみたいだね」
編集長が、隣室でコートを脱ぐ妹ちゃんに声をかける。
実は今月号から妹ちゃんも寄稿しているので、編集長への顔合わせは既済。
へへへっ、と笑いながら、妹ちゃんは私たちがお茶をのんでる台所へ入ってくる。
時すでに午前1時をゆうに回っている。なんだか妙なさんにん。

「あ、シャシン、撮ろっか」
おもむろにデジカメを取り出し、ミニサイズの三脚にセッティングするあたし。
そして深夜の台所で、せこせこと寄り集まり、持ち寄りの笑顔を向けるさんにん。
納められた画像は、奇妙なほどしっくりと馴染んでいて、まるで昔からの同居人のよう。

共同生活。
あこがれていないわけでもナイけれど。


2002年12月23日(月)
前説 NEW! INDEX MAIL HOME


My追加