 |
 |
■■■
■■
■ 祖母との生活
両親がジャマイカに行っちまったので、祖母の待つ実家へ留守番に帰ってきた。 ホームに降り立つとハンッパじゃない雪。寒さでわなわなと震え出す。 そして、あまりの寒さにへらへらとひとりわらい。さぶっ。
私が育った家は古い日本家屋で、無駄に広い。庭も広い。空も・・・まぁ広い。 二晩ひとりぼっちになった祖母は、私の顔を見るなり「こわかった」と言い、 安堵の色をうかべる。小さく「ごめんね」と謝り、私と祖母のつつましやかで 静かな生活が始まった。まさしく隠遁生活の如し。そして小さなオン返し。
私がまだこの家に住んでいた頃、祖母が私にしてくれたことを、今度は私がする。
食事の支度をしてくれたので、私が三度のごはんを作る。 雪かきをしてくれたので、私が私道に降り積もった雪をかく。 正月の花を活けてくれたので、私が玄関に(ソレっぽく)花を活ける。 たくさん買い物をしてくれたので、私が車でびゅんとお買い物に行く。 部屋の中やお布団を暖めてくれたので、私が暖房やら電気シーツを準備する。 迷子になったら迎えに来てくれたので、私が祖母を迎えにゆく。どこへでも。
「ソッチの隠遁生活はどう?」 なんてメイルを頂いたので、「花を活けたり、ごはん作ったりしてる」と返事。 「生け花? もしかしてタイトルは "AMAZON" とか?」という無礼なお言葉も まぁ、あながち間違えってはいないので(コラッ)許す。松やら千両やら百合 やらでアマゾンを演出できたら、そりゃそれでスゴイわよね。
夕方、祖母とふたりでお正月の支度をした。 玄関にしめ縄を飾り、床の間に花を活け、掛け軸と暖簾と絵を変え、鏡餅を飾る。 父方の祖父母がコレクションした古美術品は、シロウトのアタシには眼識もへった くりもあったモンじゃなくて、スミマセン、適当に飾らせていただきました。
「なーんだ、ふたりでもちゃんとお正月さんを迎えられるじゃん」 ひととおり片が付き、冷えた玄関に活けられた花を眺めながら、そう祖母に言う。 「お正月にはまみこさんも、お着物を着ましょうかねぇ」 大正生まれで来年、年オンナの祖母は、今でも一年中着物を召される。 私はその小さくなった背中に、ありがとう、とつぶやいた。
2002年12月29日(日)
|
|
 |