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■ 冬の公園
今いる家の近くに、城跡がそのまま残った結構おおきな公園がある。 久しぶりに太陽が顔をのぞかせたので、わっせと着込んで散歩に出た。
子どもの頃から慣れ親しんだ公園は、大人の足でもなかなか歩きごたえがあった。 ドーム型の体育館の横にある黒い大きなSLは昔のまんまで、そこから左手に折れて 内堀を見下ろしながら砂利道をじゃくじゃく歩く。すぐに動物のにおいがして、 ケモノたちの鳴き声がする。ピンクのフラミンゴが一本足で寒々しく立っている。 動物園は冬季休園中で訪れるひともなく、所々に雪がつもり閑散としていた。
閉鎖された美術館の前をすぎ、今度は右に折れる。 初詣の客を狙った出店が細々と支度を整えている。ここからは舗装された道。 そのまま真っ直ぐ行くと図書館と市民ホール。どちらもすっごく古いもので、 郊外に新しい文化施設が造られた。図書館の前で立ち止まって見上げる。 わたしが好きだった窓は、くすんだベージュ色のカーテンで閉ざされていた。
図書館を右へ曲がると、また砂利道になっていて、そこからずずーっと真っ直ぐ 突き当たったところに大きな神社がある。だから此処は既に参道。 中学生の頃、剣道の試合前にみんなでよくここにお参りに来た。 神頼み。もしくは気休め。あるいは団結?はたまた自己満足(笑)
誰もいない参道を突き進み、舞いの稽古を少し見てから、100円を賽銭箱に投げ 入れ、二礼二拍。「今年も一年ありがとうございました」と、ぼそぼそ合掌。 参道を戻ってくると散歩中の犬に出会い、なでなでしてから「よいお年を」 と(犬に向かって)云う。雑種で二歳になるレイくんだって。眼のキレイな子だった。
雪で一面覆われた大きな広場の端っこを横切って、起伏の激しい内堀地帯へ。 石畳の階段を下り、朱の御太鼓橋を渡り、堀を見下ろすと、あら、白鳥さんたち。 堀へ降りる階段には「立入禁止」の文字と濡れたロープ。禁止は破りたくなるサガ。 もちろん、テンッ、と乗り越え侵入成功。お堀端で白鳥をマヂカに眺める。
あたりはシーンと静まりかえっていて、白鳥が水を掻く音と、時折啼く細い声、 それに風が樹木を揺らすかさこそという音しか聞こえない。1キロ先で100円が落 ちても、その音が届きそうなくらいの静けさ。あまりに静かすぎて、私がどっかへ 消えちまったかと思った瞬間、頭上からおっさんのダミ声。
「ねーちゃん、入っちゃアカンて。おーい、だいじょーぶかっ?」
白鳥たちは驚いてバタバタと羽をバタつかせ、アタシは、むんっ、とおっさんを 見やる。くわえタバコのゴム長履いたおっさん。心配そうに橋の欄干から身を 乗り出しておる。思わず吹き出しそうになり、だいじょーぶでーす、と手を振る。
冬の公園で、わたしはたくさんの断片を拾い、 私はおっさんのダミ声に拾われた気がした。
2002年12月30日(月)
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