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■ カツゼツのよい寝言
雨の週末。 ベランダに出て底冷えする寒さに打ち震えながら、お向かいの庭に咲き誇る 見事な紅梅にしばし見とれる。そっか、三月、桃の節句もほど近し。 昨晩、久しぶりに妹ちゃんがうちに遊びに来た。 癖のある、しかし癖になるほど旨いチーズを数種と、ラナンキュラスの花を抱えて。
パスタを茹で、にんにくをたっぷり入れたトマトソースのスパゲッティと、 イタリア産瓶詰めのオリーブに、DOCGお墨付きの赤ワインを空け、 乾燥イチジクをちぎっては、こってりしたチーズをのせていだたく。 フレンチのフルコースを食べているわけでもないのに、たっぷり三時間かけて、 食べ、喋り、飲み、笑った。なんという豪快っぷり、そして贅沢っぷり。
順番にお風呂に入り、ホットカーペットの上でふたりでストレッチとヨーガをした。 そしてベットにもぐりこみ、酔いも手伝ってか、あっという間に眠りに落ちた。
が、明け方、私は自分の声に驚いて眼を覚ました。 妹ちゃんが、ひくんっと反応し、ごそごそと寝返りを打って 「今、寝言言いました?30センチとか、そんな言葉を」と問う。 「ごめん。言った。"30センチから50センチ空けなきゃダメでしょ"って」 「あ、そうそう。すごくカツゼツが良かったから、寝言なのか何なのか驚いて」
私は渋滞にハマった夢をみていた。 渋滞は、まるでイタリアの道路脇に見事に収められた縦列駐車のようだった。 私が運転する赤い車は、前後をびっちりと小型のフィアットに挟まれて身動き 取れなかった。なのに左前には電柱がそびえ立ち、私は懸命にそれを避けよう としてわずかにギアをバックに入れたのだ。ほんの3センチしか動かしていない のに、バンパーは後続車に触れた。
ぶつけたのは私の方なのに、なぜか私は逆ギレして、ラベンダー色のフィアットを 運転するおばさんを怒鳴りつけていた。「教習所で習わなかった?車間距離は 最低でも30センチから50センチ空けなきゃダメだって。わかってるの?!」と。
夢の話をすると、妹ちゃんは声を立てて笑った。 「すごく、数字が細かいですね」と言いながら。 確かに、3メートルから5メートルならわかる。 その30センチから50センチとは何を意味したのだろうか。
ベットから起きあがろうとして身体をよじったとたん、床に落下しそうになった。 もしかしたら、神経質にキョリを空けていたのは私の方かもしれない。 妹ちゃんは、すでに隣で布団に顔をうずめ、すやすやと寝息を立てていた。
2003年03月01日(土)
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