月のシズク
mamico



 ラファエロ似の店長さん

なんとも楽しき会合であった。
仕事で上京していた父を吉祥寺に呼び寄せ、妹ちゃんとふたりでたかる(笑)
旬の野菜が旨い夜酒処に引き込み、すいすいと日本酒をあおる三人は、
傍目から見て、本当に仲の良い親子に見えたかも知れない(含む、妹ちゃん)

父を駅に見送った後、打ち合わせ通り、ふたりでえびカフェに立ち寄る。
のみものを注文し、鞄から一枚の絵葉書を取り出し、順番にメッセージを書く。
そしてエスプレッソのダブルとカフェオレを運んできた店長に「はいっ」と手渡す。
その絵葉書とは、イタリアの美術館で購入したラファエロの肖像画が描かれていた。

「ねっ。似てるでしょー」
妹ちゃんが愛嬌のある声で店長に云う。
「ローマの美術館で見たとき、何ともいえない親近感があったんですよ」
私のコメントに、若き店長は「そっかなぁ」と腑に落ちない様子。
カウンターに持ち帰り、スタッフの前ではしゃぎながらポーズを取っている。

ラファエロは、イタリアのルビノで生まれペルジーノの下で修行し、1504年即ち
21歳の時フェレンツェに来た。37歳の短い生涯で、50枚もの作品を描いた若き
天才芸術家の絵画は、彼の繊細でたおやかな性格がすみずみまで現れている。
えびカフェの店長とラファエロの共通点は、若くして偉業を成し遂げた実力と
思慮深い黒目がちな眼、それと女性のように細くて薄い、肩の線だと思う。
妹ちゃんと一致した、ごくごく個人的見解として。

「うちのスタッフは似てるって云ってます」
店長がカウンターの中から、照れくさそうに笑っている。
席を立つと、ラファエロのゆるやかな笑顔が、レジの後ろに飾られていた。

2003年03月06日(木)
前説 NEW! INDEX MAIL HOME


My追加