月のシズク
mamico



 スリップの女

奇妙な夢をみた。
そもそも夢なんてみんなどこかしら奇妙なもんだ。
脈絡も色彩も、どこかみな奇妙に歪んでいる。

スリップ姿の女が出てきた。
紺色だか、グレイだかのてらてらした膝丈のスリップを着た女は、
自分の下着を切り刻んで洗濯機にぽいぽい放り込んでいた。

実在しないはずの私の叔母は、尼僧だかシスターだかで、
女が下着を放り込んだ洗濯機内をオールのような「掻き混ぜ棒」で
ぐるぐる掻き混ぜて、ブツをどろどろに溶かしていった。
それはまるで、牛乳パックをミキサーで砕いたどろどろ感に似ていた。

尼僧だかシスターだかの私の叔母と、スリップの女と、私は、
どろどろに溶けて、ぐるぐる回転する洗濯機をじっとのぞき込んでいた。
「あっ、これ切り刻むの忘れてた」
女が「掻き混ぜ棒」の先に引っかけたのは、黒いブラジャーだった。
「アタシ、ちょっとこれ切ってくるね」
女は半分溶けたブラジャーを掬いあげ、どこかへ持って行く。

「ねぇ、これ、どうするの?」
渦を巻く洗濯機をのぞき込んだまま、私は叔母に訊く。
「愛する男の服をつくるのよ」
叔母は当然の顔をして答えた。

女が切り刻んだブラジャーの破片を、ぽいと洗濯機に投げ込む。
そして、女がさんにん、洗濯機の中でどろどろに溶かされた
女の「かつて下着だったものたち」を、いつまでものぞき込んでいた。


2003年03月14日(金)
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