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■ スリップの女
奇妙な夢をみた。 そもそも夢なんてみんなどこかしら奇妙なもんだ。 脈絡も色彩も、どこかみな奇妙に歪んでいる。
スリップ姿の女が出てきた。 紺色だか、グレイだかのてらてらした膝丈のスリップを着た女は、 自分の下着を切り刻んで洗濯機にぽいぽい放り込んでいた。
実在しないはずの私の叔母は、尼僧だかシスターだかで、 女が下着を放り込んだ洗濯機内をオールのような「掻き混ぜ棒」で ぐるぐる掻き混ぜて、ブツをどろどろに溶かしていった。 それはまるで、牛乳パックをミキサーで砕いたどろどろ感に似ていた。
尼僧だかシスターだかの私の叔母と、スリップの女と、私は、 どろどろに溶けて、ぐるぐる回転する洗濯機をじっとのぞき込んでいた。 「あっ、これ切り刻むの忘れてた」 女が「掻き混ぜ棒」の先に引っかけたのは、黒いブラジャーだった。 「アタシ、ちょっとこれ切ってくるね」 女は半分溶けたブラジャーを掬いあげ、どこかへ持って行く。
「ねぇ、これ、どうするの?」 渦を巻く洗濯機をのぞき込んだまま、私は叔母に訊く。 「愛する男の服をつくるのよ」 叔母は当然の顔をして答えた。
女が切り刻んだブラジャーの破片を、ぽいと洗濯機に投げ込む。 そして、女がさんにん、洗濯機の中でどろどろに溶かされた 女の「かつて下着だったものたち」を、いつまでものぞき込んでいた。
2003年03月14日(金)
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