月のシズク
mamico



 タダでは転ばぬ女

昨夜、新宿で前会社の同期会の帰りのハナシ
小雨の中、急ぎ足で駅に着き、皆と笑顔でバイバイと手を振り合い、
中央線の階段を駆けあがった、その直後。突然ソレがアタシを襲った。

どきどきどきどき、と、動悸が爆走し出し、耳の奥で反響した。
マズイ、と思ったときには、次から次ぎへとドアに乗客が駆け込んでくる。
鼓膜にぼんやりと白い膜がかかり、ほとんど聴覚が機能しなくなってきた。

「ゆーちゃん、ダメだ。次の駅で降りる・・・」
同じ電車に乗った、ゆーちゃんにそう呟いた(つもり)だった。
電車が動き出した直後、今度は視覚が狂ってきた。

カラーだった風景が、白黒の画面になり、そのうち、つぶつぶが確認できるほどの
ドットとなって現れた。視覚が狭くなり、吊革につかまっていた左手の力がヌけた。
そして、アタシの機能不全な身体は、そのまま、すとん、と落下した。

背後にいた外国人の女性ふたりが、わたしを抱きかかえてくれた(ようだった)。
「こーいうときに、オトコのひと、ぜんぜん助けてくれないのねっ!(訳)」
などと、周囲に軽く非難を飛ばす彼女たちの声が聞こえた(ような気がした)。
「てっ、てんきゅっ・・・」
肩をすぼめ、朦朧とした意識の中で、いちお礼を言ってみる。

中野駅のホームで、ゆーちゃんにのしかかったまま下車。
ベンチに腰掛け、しばらくすると、視覚(色つき)→聴覚(白い膜がとれた)の順
で感覚が戻ってきた。うわっちゃ、これっていわゆる貧血だよな、と冷や汗を拭き
ながら(嫌なかんじの汗だった)じょじょに立ち直る。指先がわずかに痺れていた。

そのふるえる指先に握られていたもの。
黄色いステッカー。美しいオトコたちが五人。あっ・・・・、ANA?

近づく足音に我に返り、水を買ってきてくれたゆーちゃんをみあげる。
「マミゴンて、タダでは転ばぬ女だよね」
・・・月一の「オンナの日」には、血は不足するのに、血迷った行動しちゃうのね。

2003年04月16日(水)
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