Diary 有加利 【
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- 2009年09月09日(水) プチ連載「一護とルキアの立場が逆だったなら/出逢い編(仮)」その2
今私達が住んでいるこの朽木家は、特に広いというわけではない。
間取りも一般の家庭と変わらないので、外部の人が見れば社長の家にしてはぱっとしない、という印象を受けると思う。
ちなみに本家である朽木家も義兄の会社から遠くないところにあるのだが、
どうも住みにくいらしく、結婚と同時にこの家に引っ越してきた、というのが事実だった。
越してきて5年。今では三人とも家といえば本家ではなくこちらを連想するほど気に入っている。
そんな広くも狭くもない階段を登って部屋に入ると、鞄を取って中を開ける。
「数学、英語、古典、化学に物理、あと日本史のレポートか・・・」
列挙してみるとその量にうんざりしてくるが、とりあえず早くできるものから片付けるのが鉄則だ。
古典から・・・と思われがちだが、実は一番数学が得意なので、数学の教科書とノートを開く。
二次方程式は今日の授業でしっかりと理解できたはずだから、解くのも簡単だ。
「へー、今時の学生っつーのは随分変な印のついた問題を解いたりするものなんだな」
「きゃあっ!?」
突如聞こえた声に体が震えた。
真剣に物事に取り組んでいる時に肩を叩かれたりした時と同じ反応だ。
心臓がバクバクするのを抑えながら振り返ると、そこにはいつの間に入ってきたのか一人の男が立っていた。
表情からして同年代の少年のような気がしたが、それよりも気になったのはそいつの恰好。
鮮やかなオレンジの髪に黒い着物、そして腰にはスラリと長い日本刀が見える。
「なんだ貴様は!?」
落ち着いてやっと声を出せた時には、その可笑しな恰好をした少年(とあえて呼ぶ)はこちらに目もくれず、
何かの気配を探るかのようにじっとしていた。
「貴様、聞いてるのか!?」
少年は私の問いを無視しあさっての方向に視線を向けると、ぶつぶつ何かを呟いていた。
あからさまに怪しい。
私はそいつの正面に回りこんで、顔を覗きこんだ。
それでも変わらず何かを考え込む少年の頬に触れ。
そのまま距離をとると力任せに右手を叩きつけた。
「いい加減に人の話を聞け!!」