たぁちゃん日記。
さな



 感謝の気持ち…

母が言った。

あなたが帰ってこれたのは
叔父さんのおかげなのだと。


お盆休みに家に帰っておいでと
連絡があったあの時。

母が休みになったら連れてきたいと言ったら

叔父が
「お盆休みくらい帰ってこれないんじゃかわいそうだ」
と言っていたそうだ。


これを聞いた時、流石に涙が止らなかった。


帰ってきた私に普通に接していたし
私とたぁを無条件で受け入れてくれる人だった。
一番最初にたぁを抱っこしたのも叔父らしい。
その時の私は荷物を運び込んでいたので見ていないけど。



16日、夜。
父に「お前は行くな」と言われる。

17日の通夜の事だ。

たぁも調子が悪いし…。
ぶり返すのが怖いので
言われたとおり欠席する事にした。


17日、通夜当日。

祖母が行かないと言う。
子供の葬式には親は出席しない。
子供に呼ばれるからだそうだ。


余談だけれど。

だんなの葬式にも出席しない。
喪服すら着ない。
うちの実家の方ではそういう風になっている。
ゆえに祖母は祖父の葬儀には出席していない。
戸籍上は祖母が出した事になってるけどね。


今日一日誰もいない家に
祖母一人を残す事は出来ないので
最初は連れて行くつもりでいた。


結局、私が残る事になったので
私が祖母を見ている事になった。


その流れで18日も欠席となった私。


母が言うのだ。
「老いた親の姿なんて涙を誘うだけだし
祖母も辛いだろうから」

だから悪いけど18日も残っててくれと。


嫌だったけど仕方ない。



叔父の遺体に別れを告げる。
「ありがとうございました」
誰にも聞こえない声で言った言葉は届くのだろうか。



大人5〜6人がかりで部屋から叔父を運び出す。
外でも棺を受け止める人がいたので
総勢だともっと多くの人の手が介入している。

棺の乗った車が長いクラクションを鳴らした。

そんなのドラマでしか聞いた事なかった。
実家でやる葬儀とはまた違っていた。

祖母は縁側から何も言わず見送っていた。


3人きりの実家はやけに広い。

祖母はしきりに
妹2が連れて行ったしゅうの事を気にしていた。
置いてきたり(置き忘れたり)しないだろうか?
手を離したりしないだろうか?

息子の手を離してしまったと感じているのだろうか?



今更だけど。

実家に行く事が決まって、誰にもいえない事があった。
言葉や文字にしてはいけないと思っていた事があった。


お盆に帰る。


それは私とたぁの存在を認めてもらう事。

認めてもらうのは親や親戚…
近所の人、と言う生身の人だけではなく
祖先の霊も例外ではない。


認めてもらえなかったら?
離れ離れにされてしまうのだろうか?


誰かが連れて行かれそうな…
そんなばかげた考えに支配されていたのだ。



眠りの浅い日が続く。
私はたぁを抱くようにして眠っていた。



それは実家に戻った時もそうだった。

それまでは背中を向けて寝ていても平気だったのに。
手が届くところにいないと不安になるようになった。


誰にもいえないでいたのは
ここに書かなかったのは
それを呼び込みたくなかったから。



叔父は身代わりになってくれたのかもしれない。
そう考えるのは馬鹿げているのかもしれないけれど。

2002年08月17日(土)
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