ふうこの英国留学日記-その後

2002年10月19日(土) Different Perspective ヨルダン女性の怒り


今日は友達の誕生日パーティーに参加。
パーティー自体は料理も美味しく、とても良い雰囲気だったのですが
途中、ドイツ人の若い学生と、ヨルダンから来た30代半ばの女性が
宗教の話から、イスラエル問題を話し合い始めてしまって激しい議論になった。
見識の違いと彼の態度にヨルダンから来た女性は、彼に対して怒りを露にしていた。

彼は、自分からは口にはしなかったが、兵役の間に、二ヶ月間ヨルダンの
に滞在していたらしい。彼とその女性の持つの宗教認識から歴史認識はことごとく食い違っていた。

歴史の教科書的には彼の語る情報は正しいもののように聞こえた。
1948年のイスラエル建国は前年の国連の決議によって認められていたのだから、と彼は言う。僕は、イスラエルにいても人を殺したくないし、殺しあうのはばかげてる。と。

彼女は言い返す。ちゃんと歴史を勉強してよ、問題は1948年に始まったわけではない。そのもっと前から、イスラエルとユダヤ人の問題は始まっていた。
部分的にはあなたの言うことは正しい、けれど、実際にヨルダンに住んで、日々爆撃におびえるような生活をしていた私たちの生活がわかる? 私は、家族を殺されるくらいなら、自分の宗教を捨ててもいい。と彼女は言った。爆撃で多くの逃げ切れない子供や年寄りが死ぬのよ。難民キャンプの路上で生きる子供たちに罪はないわ。
あなたは、自分の子供が眼の前で、殺されかかっても、相手を殺さないっていえる?ドアを開け、突然兵士が入ってきて、自分が撃たれるという状況でも?

私はパレスチナ問題に関してはよくわからないし、難しい問題だと思うので、自分の立場や意見を述べることはできない。

しかし、話しながらも怒りに震える彼女の赤いマニキュアが塗られた指を見ていたら、強く心を揺さぶられた。彼女の真剣な話し振りに、銃声や爆撃の音が聞こえる気がした。

彼は、最後まで冷静に「僕のperspective(考え方、みかた)は正しい」と言って、気まずくなったパーティーを、雰囲気を壊してすまない。。。と言って席を立った。

彼女は、「彼は私をからかっていたのかしら?」と言っていた。彼に悪気はない。
彼は、ただまっすぐに正しい知識と、自分の経験を、考え方を語っただけだ。
私は、感情的になってしまった彼女が謝って、恥ずかしがっているのを見て、とても共感を感じた。彼女の意見は多少、偏っているかもしれない。でも、それは彼女が見てきた世界に基づいている。彼女は、多くの人が彼女のように考えないことも
わかっている。でも、現実としてヨルダンの人々の多くは、恐怖・喪失・怒り・失望をこの不毛な紛争の中で体験してきたのだ。

彼は、数ヶ月、イスラエル地区にドイツ兵として滞在していた。
しかし、その視点はその地域で生まれ生きてきた人間と比べれば、表層的であることを認識してもいいのではと思った。
彼は、その滞在経験から多くのことを学びショックも受けたことだろう。
しかし、その後彼はドイツに帰ることができる。彼女にとってはイスラエルが故郷なのだ。帰る場所は他にはない。外部から干渉する者と当事者である者ではどれだけこの地域の問題の深刻さが違うことだろう。彼はそれを踏まえて、彼女の語る言葉に耳を傾けるべきだと思った。たとえ、多少それが歪んでいても、本に載っている歴史と異なっていても。

彼の退場の後、同席していたドイツ人の女性が、「性善説を信じたい」と言った。ヨルダンの彼女は「性善説ね。。。」とぽつり。




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