ふうこの英国留学日記-その後

2003年02月02日(日) 11'09

「11'09"01 September 11」というタイトルの映画を観た。

これはSeptember 11にNYで起きたことに対して、
世界11カ国の名だたる映画監督11人が11分9秒という限られた時間の中で
それぞれの見方でこの事件を描いたオムニバス映画である。
日本からは今村昌平、アメリカからはショーン・ペン、イギリスは
からは、ケン・ローチが監督として参加している。
たった、11分とはいえ、とても中身の濃いものもあり、ショッキングなくらいの感動を受けた。この事件に関して、これだけいろいろな受け止めかたがあるということを肌で感じさせてくれるとても意味のある映画だと思った。
日本で公開されたら、見ることをオススメしたい。

2001年9月11日の事件があったころ、世界の各地ではどんなことが起きていたのだろうか?()内は監督の国

イラクの女教師は、アメリカの爆撃に備えてシェルター作りに借り出される子供たちを集めて、アメリカで何が起こったかを理解させようとし、子供たちに黙祷をさせようとした。(イラクの)

NYに在住する聾唖のフランス人女性は彼との愛の終わりに世界の終わりを予感していたが、彼は埃にまみれて命からがら彼女のところに帰ってくる。ニュースを聞いていない彼女は何が起きたかわかっていない。(フランス)

映画監督は、事件の翌日の記者会見で話すことを断わる。
そして、悩める彼は、アメリカとの紛争で死んだ若者が見えるようになり、彼との対話を通して何かを掴んでいく。(エジプト)

アメリカ在住のイスラム教徒の母親は事件後行方不明になった息子を心配する。彼が、周囲からロに加わっていたのではないかととの疑いをかけられる。息子は現場で救助のために死んだとわかり、容疑者から、一挙にヒーロー扱いをされる。(インド)

病気の母を抱えて、学校に行く余裕もなくなった少年は、ビン・ラディンらしき人物を見かけ、賞金を稼ぐために彼を捕まえようとするが。。。。(アフリカ)

1973年の9月11日、チリで何が起きていたか? アメリカは我々をテロリストを呼んだ。多くの仲間が虐殺され、拷問を受けた。ロンドン在住のチリ移民が9月11日にNYで起きた事件から、故国で起きたこと、死んだ自分の両親に思いをはせる。(イギリス)

飛行機の飛ぶ音。爆音。世界中の言葉で流れるそのニュース。ビルから降ってくる人々。無音の中で、崩れ落ちるビル。
Does God's light guide us, or blid us?
神の光は我々を導くのか、盲目にするのか?(メキシコ)

イスラエルの繁華街。爆音、血みどろになって倒れる女性。燃え上がる車。路上に置かれた鞄の中に残された時限爆弾を処理する男。現場に群がるカメラマン、TVレポーター。しかし、中継はされない。NYで大きな事件が起こったから。。。(イスラエル)

太った白人の老人の孤独な生活。部屋が暗いと、死んだ妻の洋服に向かって話し掛ける。ある朝、ビルが消えて、彼の暗かった部屋に光が差し込む。。。(アメリカ)

故郷を離れて暮らす少女と母、紛争で足を失った隣人の青年。少女は今日も不眠症で眠れずに、故郷に帰る日を待ちわびる。街にデモに出かけた彼女は、集会所のTVでNYのニュースを目にする。いてもいられなくなった彼女は、車椅子の彼とたった2人のデモ行進を始めるが。。。(ボスニア)

太平洋戦争当時、戦争から帰ってきたユウキチは口も聞けず、地べたをはいずる、蛇になってしまった。人間を止めた方がいいと思うようなことが戦地であったのだろうか?(日本)

私は特に、イラク、エジプト、インド、アフリカ、の監督の作品に心を強く揺さぶられた。中でも、ケン・ローチの11分は素晴らしかった。改めて、この監督の視点のするどさと力量に感心させられた。
それぞれの国で、それぞれの立場で、個人として、September 11をどう解釈するのか?その表現は、それぞれ違うし、立場のとり方も複雑だし、でも、とても私には教えられることが多かった。世界の多様性、多重構造を一本の映画でこれだけ、描けるというのはオムニバスならではだと思う。たった11分でも、力のある監督達はそれぞれの世界観をそこに浮き彫りにすることに成功している。ただ、日本人として、残念だったのが、今村昌平だけが、現在を描かなかったことだった。私は彼の監督作品も好きだし、期待していたのだが、September 11をテーマとして、現在を描いていなかったのは彼だけだった。

アメリカとこれだけ深いつながりを持つ日本として、September 11を現代日本としてはどう捉えているのかを描いて欲しかった。太平洋戦争の時の復員軍人を描くのは、反戦メッセージにはなっているが、他の国の監督たちが描いた、現在も進行中であるSeptember 11が世界に投げかけている波紋についてのシリアスな状況と比べていると何かズレている印象は否めなかった。









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