-殻-
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すれ違ってばかりの君と僕は、
互いの居場所を見失ったままで、 それでもお互いを探していたみたいだ。 僕にとって君は、近くて遠くて、 いつまでもそこにいるような気がして、 でも一度も手が届いたこともなく、 気が付けばあの街を離れていた。 まさか君が、この広い世界で僕を見つけてくれるなんて。 ずっとずっと探していた、なんて言ったりして。 久しぶりの君の声は、本当にあの時のまま。 まるでつい昨日話したように、当たり前の言葉を交わす。 何もなかったみたいだ。 哀しい別れも、新しい暮らしも、叶わない夢も、 知らずに君だけを見ていたあの日みたいだ。 一度だけ抱き締めた、君の細いからだ。 あの時の湿った空気。 涙。 もう、はっきり僕等は気付いた。 決してお互いを失うことはないと。 それぞれにある自分の場所の中に、 僕は君の、君は僕のための部屋を持っていることに。 このままいつまでも、いつまでも続いていこう。 君の顔を見ることがなくても、 君の声を聞くことができる。 君を抱き締められなくても、 君が生きていることを、僕は、知っている。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |