-殻-
INDEX| PAST| NEXT| NEWEST
今日から1泊2日で、同期8人で旅行。
距離としてはそんなに離れてないけど、何と言っても「島」なのだ。 海を渡るっていう行為は、日常と僕らを切り離してくれる。 みんなは港までの車の中で、ビールを開ける。 旅立ちのテンションというのは、いい感じの逸脱を誘う。 僕はドライバーだったので、ちょっとの間だけ我慢。 港までは一時間半ほど。 混み混みの駐車場で、縦列で無理矢理車を停める。 高速船のチケットを買って、ぞろぞろと船に乗り込む。 今まで我慢していた僕も、席に着くなりクーラーボックスからビールを一本。 隣で酎ハイを開けるかどうか迷っていたあの子は、 「暴走し始めたら止めてね」と断りを入れてから思い切って缶を開ける。 (最近飲み会で泥酔して大暴れしたらしく、公的には禁酒中なのだそうだ) 島まではほんの20分。 その間に僕ら一行は既にほんのりいい気分になっている。 港に着いて、宿の迎えのバスを待つ間、炎天下でぼーっとしている。 すぐ近くの交差点には信号機が立っている。 こんな昼間から、赤点滅・黄点滅。 となりに、何やら書いた看板のようなものがあった。 「この島でただひとつの信号です。 この島の子供は、これで交通の勉強をします」 と書かれていた。驚き。 そんなこともあるんだ。 でも、そんな大事な信号が動いてなくていいのかな・・・? それに、さっきから目の前をびゅんびゅん通り過ぎるスクーター。 誰一人、本当に誰一人ヘルメットを被っていない(実話)。 あ、迎えのバスが来た。 *** とりあえず宿に荷物を置いた。携帯も置いていく。 タオルとサンダル、ビールを詰め込んだクーラーボックス。 それだけ持って、いざ浜辺へ。 ちょうど日が一番高くなる時間。 パラソルを借りて、砂浜に茣蓙を敷く。 4人は早速海に飛び込み、僕を含む4人は日陰でビールを呷る。 僕はぎらぎら照付ける太陽に足を伸ばして、上半身をパラソルの影に入れる。 狭い日陰に四人が犇めき合って、ちょっと異様な眺めかもね。 でもおかげで、あの子の身体が僕の鼻先にある。 日焼け止めの独特の匂いが鼻をくすぐる。 程よく酔ったところで、僕も足だけを洗いに水際へ行ってみた。 じりじりと焼け焦げた砂の上をひょこひょこと歩いて、 貝殻の欠片がざらざらする波打ち際に足先を浸ける。 思ったよりもずっと冷たい塩水が、足元に寄せては引いていく。 ああ、気持ちいいなあ。 ハイネケンの緑色の缶を片手に、少しだけ傾いた陽光を浴びる。 水平線があまりにも眩しくて、目を細めずにいられない。 アルコールも回ってきて、まるで夢を見てるようだ。 頭の芯から、何かが抜けて行ったような気がした。 *** その後もたっぷり飲んで、沁みる日焼けを我慢しながら風呂に入った。 夕食は食べ切れないほどの魚介類。そしてまたビール。 浜辺に出て、お約束の花火。ワインを呷る。 宿に戻って、冷やしておいたスイカに齧り付く。 何故だかあの子がいつも僕の隣にいるんだけれど。 妙に自然にいるから、却って不思議な気分になる。 まあ、僕は君の保護者みたいなものだからね。 と、酔った頭で偉そうな独り言。 何もかも、日々の暮らしではありえない空気。 大したことではないのかも知れないけどね。 日常と違う、ということが大事なんだ。 追加のビールを頼んで、一口飲んだところで、 どうやら僕は眠ってしまったらしい。 とても久しぶりの、深い、深い眠りだった。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |