-殻-

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2004年07月24日(土) 脱出

今日から1泊2日で、同期8人で旅行。
距離としてはそんなに離れてないけど、何と言っても「島」なのだ。
海を渡るっていう行為は、日常と僕らを切り離してくれる。

みんなは港までの車の中で、ビールを開ける。
旅立ちのテンションというのは、いい感じの逸脱を誘う。
僕はドライバーだったので、ちょっとの間だけ我慢。

港までは一時間半ほど。
混み混みの駐車場で、縦列で無理矢理車を停める。
高速船のチケットを買って、ぞろぞろと船に乗り込む。

今まで我慢していた僕も、席に着くなりクーラーボックスからビールを一本。
隣で酎ハイを開けるかどうか迷っていたあの子は、
「暴走し始めたら止めてね」と断りを入れてから思い切って缶を開ける。
(最近飲み会で泥酔して大暴れしたらしく、公的には禁酒中なのだそうだ)

島まではほんの20分。
その間に僕ら一行は既にほんのりいい気分になっている。
港に着いて、宿の迎えのバスを待つ間、炎天下でぼーっとしている。

すぐ近くの交差点には信号機が立っている。
こんな昼間から、赤点滅・黄点滅。
となりに、何やら書いた看板のようなものがあった。

「この島でただひとつの信号です。
 この島の子供は、これで交通の勉強をします」

と書かれていた。驚き。
そんなこともあるんだ。
でも、そんな大事な信号が動いてなくていいのかな・・・?

それに、さっきから目の前をびゅんびゅん通り過ぎるスクーター。
誰一人、本当に誰一人ヘルメットを被っていない(実話)。

あ、迎えのバスが来た。

***

とりあえず宿に荷物を置いた。携帯も置いていく。
タオルとサンダル、ビールを詰め込んだクーラーボックス。
それだけ持って、いざ浜辺へ。

ちょうど日が一番高くなる時間。
パラソルを借りて、砂浜に茣蓙を敷く。
4人は早速海に飛び込み、僕を含む4人は日陰でビールを呷る。

僕はぎらぎら照付ける太陽に足を伸ばして、上半身をパラソルの影に入れる。
狭い日陰に四人が犇めき合って、ちょっと異様な眺めかもね。
でもおかげで、あの子の身体が僕の鼻先にある。
日焼け止めの独特の匂いが鼻をくすぐる。

程よく酔ったところで、僕も足だけを洗いに水際へ行ってみた。
じりじりと焼け焦げた砂の上をひょこひょこと歩いて、
貝殻の欠片がざらざらする波打ち際に足先を浸ける。
思ったよりもずっと冷たい塩水が、足元に寄せては引いていく。

ああ、気持ちいいなあ。

ハイネケンの緑色の缶を片手に、少しだけ傾いた陽光を浴びる。
水平線があまりにも眩しくて、目を細めずにいられない。
アルコールも回ってきて、まるで夢を見てるようだ。

頭の芯から、何かが抜けて行ったような気がした。

***

その後もたっぷり飲んで、沁みる日焼けを我慢しながら風呂に入った。
夕食は食べ切れないほどの魚介類。そしてまたビール。
浜辺に出て、お約束の花火。ワインを呷る。
宿に戻って、冷やしておいたスイカに齧り付く。

何故だかあの子がいつも僕の隣にいるんだけれど。
妙に自然にいるから、却って不思議な気分になる。

まあ、僕は君の保護者みたいなものだからね。
と、酔った頭で偉そうな独り言。

何もかも、日々の暮らしではありえない空気。
大したことではないのかも知れないけどね。
日常と違う、ということが大事なんだ。


追加のビールを頼んで、一口飲んだところで、
どうやら僕は眠ってしまったらしい。
とても久しぶりの、深い、深い眠りだった。



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