仕事中。 社長夫人は外出のため、一人で店番。 そんな時に限って一風変わったお客様がいらっしゃったりする。
私より少々年上っぽくて、何だかとにかく風変わりな男性。 何でこの人サングラスを後ろにかけてんだろ。
暫し店内を見回した後、そのお客様は私に向かってこう言った。
『履き易くて使い捨てできる靴ありますか?』
意味が分からず頭の中にでっかい疑問符が3つほど浮かんだが、 とりあえずそのようなものはない旨を申し上げる。
『じゃぁ、この辺にそういう靴屋さんありますか?』
疑問符、ひとつ追加。 とりあえずそのような店は私の知る限り、この界隈にはなかった筈だ。 それを伝えてから私の疑問符はその後、増えてゆくことになる。 (以降『』の後は全て私がその方に申し上げたこと)
『ところで区役所はどこですか?』 …は? あの、区役所でしたら駅の向こう側です。 ここからだと歩いて10分ほどかかりますが。
『そのカラーコンタクト、何色ですか?』 え?グレーですけれど…。
『目に悪影響とかないんですか?』 検査は定期的に受けてますから…。
『それ、メンズでも大丈夫ですかねぇ?』 あの、私の男友達でも使ってるのがいますので。
『何色が流行りなんですか?』 あの、それはお店の方にお聞きになって下さい。私のは個人的な好みですので。
『どこで作ったんですか?』 …東口のビッグカメラですけど…。
ここまで質問攻め(しかも店の商品とは無関係だし)だと 変というかちょっと怖い。つい身構えそうになる。 結局そのお客様は何も買わずに『ありがとう』と去って行かれて、 私は思わず溜息が出た。
この話はここで終わりじゃない。
3時間後に再び来店された。 『今日は充血が酷くてダメでした。 やっぱり一晩寝てからじゃないと。』 そんな報告をしに、わざわざ。
実に律儀なお客様である。
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