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2004年11月08日(月)


■「カンバセイション・ピース」保坂和志
文庫本が出たら、持ち歩いてぱらぱらと読むのに向いている本。根を詰めて読むと疲れます。読みながら他のことを考えてしまったりするので、いつまでたっても同じところを読んでいる気分に。古い家に集う人々と猫たちの日常を、会話を通して描いた作品。

この本に出てくる家の感じは、わたしにとっては新潟の家で、他の家では駄目なのが端的に本質を示しているような気がする。ひとが永く住み、死人も生き人も、その存在が染み込んでいる家。これはだからマンションなどでは全然駄目で、一軒屋でも快適な造りだったりすると駄目だと思う。新潟の家には20年以上生きた猫がいて、もう死んでしまったのだけど、訪ねていくと彼女の存在感がまだ家にはあって、そしてそれが時とともにだんだん薄れていくのも感じられる。この小説でテーマにしているのは、ひとつにはそういうことである。こんなことを芋づる式に思い出していくものだから、本当に読み進まなくて困った。面白い本だと思う。

この家には19歳のゆかりちゃんから、44歳の主人公(作家の分身だな)までが住んでいて、それぞれずれた会話を展開する。いろいろ小難しいことを皆考えてはいるのだが、どうもまとまりが悪く、結局よくわからないということになる。知っていることと知らないことは比例するっていうのと、主観を越えたところで、いい音楽とダメな音楽があるという話はそうだよなあと思いながら、それに反発するゆかりちゃんの気持ちもよくわかるのだった。