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2005年10月12日(水)


■「ソウルの練習問題」関川夏央
先日感想を書いていたら、恐ろしく長くなったのでいったん保留にしてました。これも長年積み上げておいた一角にあった一冊で、シュリが公開される数年前に購入したものだから、ずいぶん前のものです。まだ韓国という国がぴんとこなかったのと、関川氏の男臭さにちょっと疲れてしまって(笑)、ちょうど半分読んだところで力つきたのでした。

本書はまだ日本との国交がままならない時期に書かれたもので、今とはずいぶん事情は違っているのだけど、韓国入門書としてもすぐれているし(本文の下に解説がぎっしり書き込まれている)、また在日韓国二世の独白という章は今読んでもしっかりした内容でした。

■「ジョイ・ラック・クラブ」エィミ・タン
映画版の方は10本の指に入れていた大好きな作品です。葛藤のあるタイプのマザコン女性にオススメ(笑)。洪水のような母の罵倒と愛情にまみれることができまする。はは。小説も素晴らしかった。海のような、もっと言ってしまえば羊水のような、底なしのような、それでいてなんともいえずいい加減の温かさがあって、わたしにとっても母親って本当にこういう感じがする。

在米中国人二世とその母、4組の物語で、上記の本もそうだし、ジュンパ・ラヒリの書いているものとも重なるかも。親子のあいだには世代的な断絶と文化的な断絶があって、過酷だとは思うのだけど、でもいまの日本人から見たら、その葛藤はもしかしたら羨ましいものに感じられるかもしれない。まあわかりませんけど。

ところで舌の根も乾かないうちにあれなんですけど、映画版で好きなシーンがふたつあって、そのふたつとも原作に付け加えられた部分だったことが今回わかって、それもまた興味深かったです。確かに小説だと言わなくてもわかるんだけど、映画であえてセリフにされたふたつの言葉が今でもわたしの支えになっているのでした。

あと訳についてちょっと書いておくと、中国語の部分は発音をカタカナで書いてあったのですが、漢字にフリガナというスタイルにして欲しかったなあと。こちとら日本人だからーさーとか思いました。原文はたぶんすべてアルファベットだったのだろうなと推測しますが。あとせっかく漢字にしても”ティエン”が「天」じゃなくて「空」だったりして、ちょっとした手抜きは文庫化のときに直して欲しかったなあ。でも雰囲気はすごくよかったです。ぬめぬめした魚みたい、と思いました。

■ビフォア・サンセット
こちらは映画です。イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー主演の「恋人までの距離(ディスタンス)」の9年後の続編。ちなみに前作の原題は「ビフォア・サンライズ」なので、続編ができたときに邦題のタイトルはちょっと悩んだのでは。この作品、面白いところがいろいろあって、続編までに空いた時間と物語の中の時間も一緒というのがひとつ。イーサンとデルピー、監督が共同で脚本を手がけているのも興味深い。デルピーがとにかく喋り捲っていて、フランス女性こわ・・と思いました(笑)。フランスは馴染みのない文化なんで、彼女の役が典型的なフランス人なのかはわからないのですが、彼女と対等に話すのはかなり大変だと思いました。

で、イーサン食われすぎ。というか枯れすぎ。。前作の映像がちょっと入るのですが、あのときのイーサン・ホークは素敵だったのになあとちょっと哀しくなりました(笑)。でも一夜のできごとを小説にしちゃうぐらいだからな。しょぼい。しかも行ったのか! とかもう何がなんだかわからないのに面白くてしょうがないです。前作は確か深夜にぼんやりとテレビで観たもので、あまり印象に残っていなかったのですが、このくらいの適当感がなんだか心地よく感じました。この作品に限っては前作を見てすぐにこれを観る、というスタンスはちょっと違うかもしれない。そうのうち忘れた頃にサンライズの方をまた見ようかなー。

横で見ていた母が、「この映画は少ない予算で撮っているの?」と聞いてきてちょっと笑えました。もしや一日で撮ったのかと思ったけど、実際は15日だそうです。