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2006年07月10日(月)


■文学の教室(『火車』 宮部みゆき)
初めて参加してきました。噂には聞いていたけど、下北遠かったしなー。本の中に自分の知っている場所が出てくるとやっぱり面白い。某ハードボイルド小説では、冒頭で死体発見の場所がうちの実家の近くだったりして、あのへんに捨てられたんだーとか思ってました(笑)

火車はこわいです。ホラー小説より怖い。わたしがカードをずっと作らなかったのはたぶんこの本のせいだと思う。高校生の課題図書とかにすればいいのに。

ここに出てくる様々なタイプの女の人たちは、誰もそんなに人生をうまくこなしていなくて、かといって別に痛いキャラとかでもなく、ただ10代の頃に描いていた生活とは違うんだなと漠然と思っているようなひとたち。たぶん時代がバブルがはじけてすぐの頃で、ちょうど「あれ、なんか違ってた」と一番思っていた世代なんじゃないかと思います。わたしはどちらかといえば、苦しい時代をちょうど育ってきた感じで、今は結構景気がよくなっているから、ある意味隙間の世代かも。

この本の中でいちばん怖いのは、ラストだと思う。犯人のことを知りたいと思って主人公たちはただそれだけのために奮闘するわけですが、それは読者も同じで、どうしてここまで…と、それだけが気になって最後まで読み進めるのだけど、でも結局どこまで行ってもわからないんですよね。

たとえばニュースで殺人犯の動機が語られたりするのだけど、それでわかるのってほんとに全体の一部しかなくて、やっぱり殺人を犯すひとの気持ちなんてわからない。そういう漠然とした恐ろしさをうまく捉えた作品だと思う。「模倣犯」は逆にそういう部分に迫ろうとしていますね。たぶん。