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2006年11月10日(金)


■ レイハル☆ヴォイスコレクション2006
先日行われた歌人の玲はる名さんのソロイベントに行ってきました。今回は2年ぶり5回目と仰っていたかな。わたしは2004年に続き2回目。

会場はいつも同じ場所で、赤坂にある「ですぺら」というバーカウンターのある素敵なお店です。お店の方が文学がたいへんお好きらしく、お酒の棚には本も置かれていて、そのセレクトがわたしから見ると摩訶不思議な感じ(笑)。今回はマスターがお客さんたちに紹介しているという詩人・平井功氏を取り上げて、彼の紹介(マスターからのお話もあり)が半分ぐらいというソロのイベントとしては一風変わった構成でした。

平井氏は明治生まれ、26歳で亡くなった詩人で、お話を聞いているとこのひとの嗜好性がなんとなく面白い。おうちがお金持ちだったこともあり、すごく豪華な詩集を作って、それが今ではプレミアになっていたりするそうです。詩の感覚としては、ちょっと今でいうフリーターのような印象をうけました。満ち足りている気持ちと、常にでも何か足りないと思っている気持ちと、静かに行ったり来たりしているよう。


レイハルさんと最初に会ったのは(5年くらい前?)中野のカルマという場所で、お店の中ですらない、階段下の小さなスペースに身を縮めて、お茶を飲みながら歓談するように詩(のようなもの)を楽しむ会でした。まだ続いているのかな。おそらくは、わたしの朗読イベントの原点がここにあって、芸術性うんぬんより、なんとなく楽しいねえふふふ、というあの場所のやさしい雰囲気が心のなかにずっと在る。

そのときのレイハルさんの朗読のインパクトがすごくて、わたしはずーっとまた彼女の朗読を聴きたい!と思っていたので、コトバコで機会が持てて、真っ先にお願いしたのでした。わたしの中では、彼女は歌人という線引きがあまりなくて、(短歌は不勉強すぎて好き嫌いでしか感想を述べられないのですけど)詩の素晴らしさは声を大にして言いたい。

詩を書く人間には、詩が自分と世界(自分以外のもの)との繋がりであるもの(わたしもそうですし)が多いと思うのですけど、レイハルさんの詩というのは、すべてを包括しているように思います。例えばトマトを作ると言った時に、土とか畑の様子とか、そういうものも一緒にまとっているというか。生活感とも違うし、なんていうか、詩人が書くものはほとんど自分の内在している風景だったりするのですけど、今ここに確かに存在しているという自分も含めた世界のリアルな存在感がある。そういう方向性や感覚の違いにいつもはっとします。


レイハルさんのイベントは、半分ぐらいがトーク。作品に関すること、自分のこと、朗読の間にいろいろお話されるのですが、MCじゃないんですね。これもまた不思議。補い合っているとかどっちも際立っているとかでもなく、全部でひとつ、という感じです。

それから、詩のボクシングに定期的に参加されているそうで、その影響で耳でどう聴こえるか、というところで色々チャレンジがあったようでした。初めて聴いたときから先日の朗読まで、進歩していく、先鋭化していくというよりは、包括していくものが増えていく、という独特のスタイルの方だと思いました。詩の方たちにもまた紹介したいです。楽しい一夜でした。