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2006年11月11日(土)
■ユメ乃隠レ家 vol.2 歌人のキクチアヤコさん主催のイベントに行ってきました。まずお店がすごい。新宿ゴールデン街のなかにある小さなお店で、中はゴシック調?ロココ調?そのへんは定かではないんですが、おにんぎょさんみたいな女性二人がやっている雰囲気のあるお店でした。ティム・バートンが来店したらしく、壁に直筆のイラストがあったりして、普段でも遊びに行きたいところです。 キクチさんというのはわたしより年下、若手の歌人の方で、さわやかな感じなのだけど、よく見ていると熱血そうな感じも(笑)。2003年のよるのひるねでのわたしの朗読への感想をいただき、驚愕。よくもまあ、そんな前のことを。。でもたぶん、そういうものですよね、とその場にいた人たちで妙に納得しつつ、その日のわたしと、この日のキクチさんが似ているといつのさんには言われました。それはまた後で書きます。 トップバッターは伊津野重美さん。久しぶりに「花は自ずから紅なり」の映像や早坂さんの詩が入り、やっぱり時間がたっぷりあると色々観れていいなあと思いました。マイクの調子はいつも以上に悪かったけれど、思わぬ効果もあって、時には詩のイメージぴったりにゴーストを背負っているような不思議なハモリが入って、これは面白かった。その詩、郵便配達夫の出てくる早坂さんのテキスト「未着の手紙」を朗読したものが今回は一番よかったです。前回の雨虹のイベントでよんだ「ねむるいき」はいつのさんにとって、ひとつ何かを得たのではないでしょうか。ことばのリズムに磨きがかかっていて、何度も繰り返される「火は」この発音ひとつとっても、アクセントは逆転していたりはしないのに、何か別のいきものの名前のように聴こえました。火は火だけど火じゃない火だっていうのがよくわかった(…すみません) 小さな声で読む歌、もしかしたらこれもマイクなしでもいいかもしれないと思いました。反響の少ない場所で、声を吸ってしまうかなとも思うのだけど、いつのさんの声ならささやき声もちゃんと聴こえるような気もしました。ちょっとマイクの音が悪すぎましたね。。基本的にはマイクなしの方が好み。ただ、最近はマイクを通した声が(いつのさんの場合は声が変わりますね)合うなと思うテキストも増えてきて一概にはいえないのですけど。そうやっていろいろ試していたものが、ここ最近一気に表出してきたような気がする。何回も聴いているのに、前回と今回の朗読は改めてすごく新鮮でした。 次は主催者でもあるキクチアヤコさん。 ちょっとびっくりしました。こういう朗読に出会える確立ってものすごく低いと思う。朗読慣れしていない感じがあって、噛んだりもしていたけれど、逆に上手い朗読の意味ってなに?と自分に問いただしたくなるような。一生懸命読んでいるからいい、とかでもなくて、まだ朗読の方向性がどこへも向かってはいないのだけど、歌や詩があって、それを声に出すというシンプルな行為をそのままシンプルに行っているようなのが大変心地よく、そっか、ここが原点だったなと思ったりしました。 声と音の響きがいい。少しだけ独特。この「少しだけ独特」の感じをうまく表現したいのだけど、なんていうのかな、いわゆる素読みに近いのだけど、何か独特のものが乗っかっている感じがしました。コントロールしきれていない感情の揺れというか。この微妙さが出せるのって、朗読に慣れてしまうまえの本当に短い時期だけかもしれない。すごくラッキーだと思いました。この夜は。 (そういう揺らぎがかな?と思ったら、いつのさんがおっしゃるには瑞々しいところが、とのこと)読み始めの頃のわたしと似ているという話でしたが、あと何年かしたら全然別の方向に向かうだろうなという予感があります。キクチさんもずっと聴いて行きたいな。 最後が松永天馬さん。他に映像と、音楽(ピアノ)が入りました。全部でひとつの作品として、すごく完成されていて、特に映像がよかった。テキストと朗読も面白かった。ちょっと古ぼけた青春の匂いが心地よく。ただ長すぎかな。えらい分厚い紙の束が気になって仕方がありませんでした(当たり前だけど…全部読みましたね)。 実際の時間の問題ではなくて、テキストが内容より長い印象。映像とテキストからは詩情をすごく感じるのだけど、朗読を聴いているかぎりでは、短編小説を丸読みしているような印象がありました。黙読する分にはぜんぜん長くないとは思います。 山場の、電話で話しながら、大学の門へ向かう二人の男女の描写。これはすごくよかった。ときどき思い出すと思う。もったいないので説明はしないけれど、本当にいい場面だった。 ![]() |