宛名のない言伝

携帯の送信箱の奥底に
宛名のない手紙が沈んでる

それは
謝罪で
弁明で
懺悔で
遺言。


後四日で厭うた『大人』になるけれども
死にたいと思わないのは
日々に終われて
死にたいと思う余裕すらないからだろう

私は生きている
願った存在ではない形で
それでも確かに、生きている


沈んだ言伝に
宛名を付けれないのは
多分、絶望し切れていないから
死にたいと
誰かの裾を引くのを
些細な自尊心が邪魔をするから

もし私が死んだ時
誰かが奥底から手紙を引き上げてくれたなら
それはとても幸せなことだ
とてもとても幸せなことだ。


春に会おうと繋いだ約束
夏に行こうと結んだ約束
秋に遊ぼうと絡めた約束
一年先まで繋がった糸
暫く真白い手紙には
宛名が付くことはないだろう


不思議な気分だ
けれども悪くはないんだ
送信箱の奥底で眠る手紙
眺めて私は息の仕方を思い出す
2008年12月09日(火)

AGO。 / 走馬真人

My追加