蜜白玉のひとりごと
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2002年02月11日(月) |
「気をつけっつ」のK先生と巨人 |
孫引きで失礼。ある医学の本に、「ひいきのスポーツ・チームが勝ったりすると、人間を元気にし活性化する何かの分泌物が、体内でより多く分泌される」という記事があったという(『村上ラヂオ』の「太巻きと野球場」より)。村上さんはながいことヤクルト・スワローズのファンらしいのだが、この説にのっとって考えてみると、「通算勝率から、ヤクルト・ファンになるより巨人ファンになっていた方が遥かに充実した人生を送れたんだということになる、僕の人生を返してくれ、僕の大事な分泌物を返してくれ」と叫んでおられる。いや、叫びたくなる、だったかな。
確かに巨人ファンの方が分泌物は多く出ているかもしれないけれど、巨人ファンでも苦労が耐えない人もいるのだ。
私が通っていた高校の国語科のK先生は、大の巨人ファンで、己の人生を完全に巨人に委ねていた。と言うのも、巨人が勝った次の日は、肌つやもよく晴れ晴れとした顔で、足取り軽く授業にやってくる。「いや〜、巨人勝ったね!松井!いいね!」私はめったに野球を見ないので、朝のニュースで巨人が勝ったことは知っていても、松井がどんな感じでよかったのかはよくわからない。ただ、K先生があんまりうれしそうなので、よかったんだなあ、というのは伝わってきた。
逆に、巨人が負けた次の日のK先生は、気の毒なくらいに落ちこんでいて、それはもう、どこか具合でも悪いんじゃないかと心配になるような感じなのだ。表情は暗く顔面蒼白で、授業中もうなだれて昨日の試合を振り返って、愚痴というか反省というか、誰に向かって話すというわけでもなくぼそぼそ言うのだ。授業なんか、そっちのけである。教科書は全然進まない。でも誰も文句を言わない。教室には「先生かわいそう…」的な雰囲気が漂っていた。
巨人の話になると、だから私は必ずK先生のことを思い出す。もう退職されたのかな。巨人が負けた次の日に、誰が先生の愚痴を聞いているのだろうか。巨人が勝った次の日、ちっちゃい体でちょこちょこ元気よく歩いている先生の姿が忘れられない(思えば、あの時のK先生の体には確かに、何か体を元気に活性化させる分泌物が分泌されていたようだ)。
私はどこの野球チームのファンでもないけれど、K先生の事を考えると、1回でも多く巨人が勝ってくれることを願わずにはいられない。
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