蜜白玉のひとりごと
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周囲で結婚話が続いてたいへんだという話をちょっと前にしたけれど、最近ないなあ、そろそろ一段落かなあ、と思っていたら、ひさしぶりにその話が出た。
仕事を終えて家に帰ってきたら、昼間、祖母に会ったという母がおかえりなさいのすぐ後に、今日おばあちゃんがね、「蜜白玉ちゃんは早く結婚させてあげなきゃ。いい人見つかったのよ。これこれこういう人なんだけど、どうだろうねえ。」だって、どうする?と言ってきた。どうするも何も…。
祖母は横浜で小さな料理屋をやっていて、ずいぶんながくやっているものだから、何やら仲良しの常連さんがたくさんいて、そのうちのひとり(仮にSさんと呼んでおく)のお孫さん(といっても私より年上)を候補にあげているらしい。私はSさんはもちろんのことSさんのお孫さんにも会ったことはないし、話も聞いたことがなく、その人が一体どんな人なのか想像もつかない。言ってしまえば祖母がひとりで(もしくはSさんとふたりで)盛り上がっているだけのことなのだが、相手が大切なお客さんだけに、私としても全然その気がないからと言ってあまり邪険にするわけにもいかず、変に気を遣う羽目になる。
話はまだたいして進んでいないようなので、私は今の時点ではさっぱり結婚する意志がないということを母の口からさらっと伝えてもらうことにした。私はしばらく祖母のお店にも顔を出さない方がよさそうだ。
それにしても、驚いた。祖母は以前から「いい人が見つかったら早く結婚しなさいよ。」と私の顔を見る度に言っていたが、まさか「どこそこのだれだれさん」という具体的な形で話を持ってくるとは、私も母も予想していなかった。女三代の結婚話といえば有吉佐和子の『紀ノ川』が思いつくが、あれはゆるゆると流れていく女の人生の話だった。流れること自体いっこうに構わないが、どうせなら自分の意思で流れたい。
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