蜜白玉のひとりごと
もくじかこみらい


2002年04月24日(水) それでもカプチーノ

午後6時過ぎ、いったん仕事の手を休めて、食事をしにおもてへ出る。日中はひなたにいると汗ばむくらいでも、この時間になると心もちつめたい風が吹き、何か一枚はおっていないと肌寒く感じられる。体調を崩しやすくなるのも、この気温の変化のせいだ。油断して薄着をしていると、とたんに風邪をひく。今は「魅惑の10連休」の前なので、風邪をひくわけにはいかない。外へ出るときは必ず上着をもって出かけるし、毎晩寝る前にはビタミン剤を飲むようにしている。

食事のあとはいつも、仕事場に戻る途中にある小さなパン屋さんで、カプチーノを買う。値段は自販機のコーヒーと50円くらいしか違わないが、こっちの方がずっとおいしい。ミルクの甘さとエスプレッソの苦みがちょうどいい。カプチーノを飲みながら、えいやっと気合いを入れて、残り数時間の仕事に向かう。

このパン屋さんには、以前付き合っていた人とそっくりな人が、ときどきパンを買いに来る。はじめて見たときは、本人かと勘違いして何も買わずに走って逃げてしまった(いろいろな理由で、私は以前付き合っていた人には二度と会いたくない)。数日後、またパン屋さんで同じ人を見かけた。前回はあわてて逃げてしまったけれど、よく考えればこんなところで会うことはまずない。少し離れたところから落ち着いて見てみると、本当によく似ているけれど別の人だった。視線を感じたのか、そっくりさんが振り返って、うっかり目が合ってしまった。私がよっぽど変な顔をしていたのかもしれない、そっくりさんはなかなか目をそらさなかった。目が合うとますます似ていて、私は金縛りにあったみたいに動けなくなった。その人と付き合っていた頃の空気を少し思い出した。言い返したいことがあるのに言葉が出てこない、息のつまるような感覚。酸素の薄い感じ。私は目的のカプチーノだけ買うと、急いでその場を立ち去った。

それから何度も、このパン屋さん周辺でそのそっくりさんを見かけた。見かけるたびにいちいち驚いた。だからこのごろは、パン屋さんへは、そのそっくりさんがいないのを確かめてから入ることにしている。そっくりさんに罪はないけれど、目が合うとやっぱり足がすくむのだから仕方ない。


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