蜜白玉のひとりごと
もくじかこみらい


2002年05月08日(水) 種まく人々

街中にひとりでいると、自然と耳がダンボになる。特に、話し声には敏感に反応する。すれ違うカップル、高校生や大学生の団体、電車やバスの中での携帯電話。よく聞いてみると、これがかなりおもしろい。聞いちゃ悪いかと思いつつ、たいていは大きな声なので、嫌でも耳に入ってくる。

昨日も、仕事帰りのバスの中で、私の後ろに座っていた大学生らしい男の子ふたりが、大きな声でしゃべっていた。はじめは、ひとの頭の後ろでわーわーうるさいなあ、と迷惑に思っていたけれど、バスが大きい通りを進み、オープンしたばかりの喫茶店の脇を通り過ぎた時、状況は一転した。

片方の男の子が、その喫茶店を見つけたらしく、「この店もスタバ意識してるよなあ。そんなにみんな、コーヒー飲みてえのかよ。そしたら、おれがおいしいコーヒー、水筒に入れてきてやるよ」と、もうひとりに話しかけた。水筒!!(笑)私はもう平然とした顔はしていられなくて、窓の方を向いてにやけた顔を隠し、なんとか笑いをこらえようとした。にも関わらず、彼は追い打ちをかけるように、「おいしいコーヒーって言っても、鍋で煮たインスタントコーヒーだけどな」と、ぼそっと付け足した。鍋で「煮た」?!(笑)もう我慢できなくなった私は、肩をふるわせて笑ってしまった。鍋で煮た、鍋で煮た、・・・。私が笑っていることに、彼らが気づいたかどうかはわからない。

その後も彼らは、バスが駅に着くまでの間、「1週間を330円で生きる方法」について熱く語っていた。「まずな、卵ともやしとエリンギを買うだろ?んで、毎日、調味料で味付けを変えんだよ。和風、洋風、中華風、和風、洋風、中華風、・・・ってな具合に。今朝はしょうゆ味で和風だったから、明日の朝は洋風だ。昼に外食しちまったけど、まあしょうがねえよな。人間がんばれば、1週間330円で生きれんだよ」「すげえよな。で、おまえんち、今どんな材料あんだよ」「だから、卵ともやしとエリンギだよ」「それだけかよ!」

なんで、よりによってエリンギなのか。貧乏学生の会話は、とことん楽しい。バスを降りても、私はにやけた顔のまんまだった。街のあちらこちらには、今日も笑いの種がこぼれている。


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