朝から雨。通学電車で、武田百合子『遊覧日記』を読む。浅草花屋敷、浅草蚤の市、浅草観音温泉の話。どれも浅草のいかがわしさがよく表れている。雨の日の、薄暗いじめじめした電車で読むと、余計にその感じが出る。私が浅草に行くのは年に一回くらいで(浅草には先祖代々のお墓がある)、だから本当は浅草のことはあまりよく知らない。でもなんとなく、いかがわしい感じのする町だと思っている。いかがわしくて、胸焼けのする感じ。帰り道、バス停から家まで歩いていると、急に雨が強くなる。あっという間に靴の中がぐちゅぐちゅになり、ジーンズも膝の上まで濡れてしまう。道路の端が川になって勢いよく流れている。カバンの中身だけは必死に守って歩く。ほんの五分くらいの距離なのに、家がものすごく遠い。後ろから来た車を避けた拍子に、水たまりに足を突っ込む。小学校の帰り道、遊びながらだらだら帰ったことを思い出す。わざと深い水たまりの中をじゃぼじゃぼ歩く。家に着くまで、誰ともすれ違わなかった。